2014年09月09日

Moonglow / Art Tatum Trio

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昨日の十五夜、東京は恨めしくも雨交じりの曇り空でした。でも本当の満月は本日、大きな月が上がっています。月に一献傾けようかとこんな曲。

It must have been Moonglow, way up in the blue
It must have been Moonglow that led me straight to you
「青空に浮かぶ月の輝きが、僕を君に導いてくれた…」と何ともロマンティックな歌詞の「Moonglow」。1933年にウィル・ハドソンさんが作り、アーヴィン・ミルズさんとエディ・デランジェさんが美しい歌詞をつけました。1934年にベニー・グッドマン楽団がヒットさせ、スタンダードに。古くさいっちゃあ古くさい曲だけど、昔の人はいい曲書くなぁ…とも思います。

歌入りでもインストでも、様々な人が様々な名演を残しているこの曲、多くはしっとりとムーディに演奏されますが、今夜はコロコロと転がるようなジャイヴィなテイクで。ピアノを弾くのは「巨匠」アート・テイタムさん。続いて出てくる何とも楽しくなっちゃうギターはタイニー・グライムスさん。そしてベースのアルコ弾きはスリム・ゲイラードさんとのコンビでもおなじみ、スラム・ステュアートさん。ずいぶん前にもここに書いたことのある、超絶技巧と歌ゴコロに遊びゴコロを兼ね備えた(個人的には)史上最強ピアノ・トリオです。額に汗して思いっきり音符を叩き込む巨匠に対して、「まぁまぁ肩の力を抜いて…」と言わんばかりのフレーズで応えるお茶目な2人。巨匠がどう思っていたかは知る由もありませんが、硬と軟、何とも絶妙なメンツだと思います。録音少ないのは何とも残念がいずれも名演です。以前に『THE COMPLETE TRIO SESSIONS』なるCDが2枚出ていたみたいなんだけど、今では手に入りません。未発表含む全曲集とか再発してくんないかな…、と月にお願い。



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2014年08月31日

I'm Losing You / Vaneese & Carolyn

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7月終了時点で我が中日ドラゴンズは貯金2のセ・リーグ4位。首位読売とのゲーム差は5.0。厳しいとはいえリーグ優勝も不可能な数字ではなかったのです。チームもファンも「勝負の月」と思っていた8月、終わってみればまさかの球団ワースト記録の月間20敗(7勝)。優勝どころかCS進出すら夢のまた夢に消えていきました。目標を失ったチームは糸の切れた凧状態。我々ファンも迷える子羊状態なのです。神よ、なにゆえ我らにこのような試練を与え給うのか…。

こんな時期に限って、なぜか普段より多い観戦機会。もはや苦行のようなテレビ観戦を終え、どこにも持って行きようのないモヤモヤした気持ちを治めようと、聴いているのはこんな曲。ヴァニース・トーマスさんとキャロリン・ミッチェルさんの1977年のシングル・オンリー「I'm Losing You」。別れの予感に泣き崩れそうな切ないバラッド、気丈に歌いきるヴァニースさんのヴォーカルにやられます。赤坂の伝説的ソウル・バー「ミラクル」(行ったことないけど)のオーナー、川畑満男さんが選曲・監修したシングル・オンリーの貴重音源ばかりを集めた名盤『SOUL GALAXY』に収められておりました。この曲のみならず、甘く切なくやるせないスウィート・ソウルが20曲。傷心を抱え、ソファによよよ…と泣き崩れるには最適の甘茶アルバムでした。

ヴァニース・トーマスさんは、あのメンフィスのファンキー爺、ルーファス・トーマスさんの末娘だそうです。ということはお姉さんはカーラ・トーマスさん。ほとんど知らなかったのですが、ヴァニースさんはソロで1987年にアルバム『VANEESE』を出している他、様々なジャンルでの下積みを積んだ後、2000年代に入ってから何枚かアルバムを出しています。公式HPもありました。最近のパワフルなステージのビデオも観ることができます。恥ずかしながらこの文章を書くために調べてみるまでは、全く知らない存在でした。反省。



夏休み最後の「俺のベンチ」には赤トンボ。それでも行くのだ、秋風寂しき最下位攻防戦の神宮に。

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2014年08月27日

Beautiful Life / Chuck Brown (feat.Wale)

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久しぶりに長袖のシャツを引っ張り出しました。ようやく連休が取れたと思ったら、バカ夏はいったいどこに行っちゃったんだろうという肌寒さ。「俺のベンチ」にも行けません。残念ですが仕方ないので家でこんな文章書いたりしています。しかし、こうなるとすぐに熱燗呑みたくなっちゃうのが我ながら単純すぎる思考回路、よく冷えた生ビールか熱燗か、の2択しか思い浮かばないのです。

プロ野球の方も我が愛する中日ドラゴンズは早くも秋風モード。勝負のはずの8月に逆転VどころかCSすらもぐんぐん遠のく負けっぷり。もう楽しみったら山本昌投手の最年長記録更新くらいしかないのです。

何にもせずに家で音楽を聴いたり本を読んだりの連休、結果としては骨休め。何度もリピートして聴いていたのはチャック・ブラウンさんの「Beautiful Life」でした。昨日新宿までわざわざ買いに行ってきたCDのタイトル曲。一昨年の5月に75歳で亡くなったチャック・ブラウンさん、まさか新譜が聴けるなどとは夢にも思っていなかったのですが、ディスクユニオン新宿ソウル/ブルース館から先日送られてきたメルマガを見てびっくり、慌てて買いに行ってきたのです。

一応説明すると、チャック・ブラウンさんはワシントンDCのご当地ファンク・ミュージック「ゴーゴー」界のゴッド・ファーザー。どファンクからブルーズから歌ものスタンダードまで、その独特のリズムに乗せてすべてをGo-Goにしてしまうファンキー爺さんでした。その新譜『BEAUTIFUL LIFE』は亡くなる前年の2011年位に録音してあった音源を、クラウドファンディングで費用を募り制作したものだとか。知っていたらば喜んで協力したんだけどな。

「ファンキー爺さん」とさっき書いちゃいましたが、チャックさんはただのパーティ・ピープルではなく、胸の奥底に少年のココロと美しいメロディを持っていた哀愁の人。その深い歌声を聴けば僕にはわかります。同郷ラッパーのワーレイ(Wale)も参加した表題曲の「Beautiful Life」、ファンキーさと歌心が兼ね備わったチャックさんらしい名曲だと思います。自分の人生を歌ったかのようなタイトル、きっと天国でも上掲ジャケットのように、楽しげにギターを弾いていることでしょう。


生まれて初めて腰をやってしまって動けなかった先週。歳を感じました。人生ももう秋なのです。

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2014年08月19日

What Have You Got To Gain By Losing Me / Jeanette Jones

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ふと気がつけば、すでにツクツクホウシの大合唱。「夏大好きおじさん」を自称していますが、このところ毎年毎年職場のイベントであたふたしているうちにお盆明け。海はおろかプールにさえ行けてない夏を過ごしています。夏のバカンスが「俺のベンチ」だけではちと寂しく…。今日はコンビニの棚に早くも並んだ「秋味」を見つけて、愕然としてしまいました(もちろん買ったけど…)。

去りゆく夏を惜しみつつ、こんな曲で一献。ジャネット・ジョーンズさんの「What Have You Got To Gain By Losing Me」。ジャネット・ジョーンズ?「誰よそれ!」と思ったあなたはしごくまっとうです。僕も聞いたことのなかった名前のレディ・ソウル、しかもこの曲は未発表。英KENTが権利を持つ膨大な曲目のリストの中から、幅広く、しかしソウル・バラッドのみに焦点を絞って2010年に組まれた『DEEP SHADOWS: THE BEST OF KENT BALLADS』に何気なく収められていた曲です。名曲居並ぶこのアルバムでも一際輝いてると思いましたが、CD買ったごくわずかなソウル・ファンしか知りえない重箱の隅ナンバーでした。しかし、超有名アーティストの大ヒット・ナンバーでも、どっかの倉庫の片隅に眠っていた超無名シンガーのテープでも、ココロの耳で聴けば貴賤はないのです。

ジャネット・ジョーンズさんはジャクリーン・ジョーンズさんの名前でも録音を残しているベイエリアの歌姫(らしい)。ってどちらの名前も知りませんでした。しかしこの曲、ゆったりと滋味あふれる歌声とメロディ。派手さはないけど、秋の夜長にゆっくりと聴きたい一曲(まだ暑いけど)。書いたのはかのジェリー・ゴフィンさんと、バリー・ゴールドバーグさん。40数年忘れ去られていた名曲です。

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2014年08月05日

Pressing On / Alicia Keys

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またここをしばらくほったからしにしてしまいました。前回の更新から20日以上、その間僕は自分のバンドのライブをしたり、俺のベンチで熱中症気味になったり、はるばる青森までジャパン・ブルース・フェスティバルを観に行ったり(すごくよかった!)、シル・ジョンソンさんのステージを観たり(すごくよかった!)、野球場にビールを飲みに行ったりデモに参加したりと、ここに書くべきことはいくらでもあったのですが、書けていないのはすべてアルコールのせいです。

でもこれだけは書いておかねば、とアルコールで霞のかかるアタマで書き始めたのは映画『黄金のメロディ〜マッスル・ショールズ〜』のこと。アラバマ州の片田舎マッスル・ショールズで生まれた音楽の魔法についてのドキュメンタリー。昨年アメリカで公開され、是非観てみたいとは思ったものの、まさかこの日本で公開されるとは思ってもいませんでした。しかし予想は嬉しくも裏切られ7月12日より新宿シネマカリテを皮切りに全国順次公開となっていて、しかも大変好評のようです。僕も遅ればせながら7月29日に観てきました。

僕がどれほどこの地の音楽に入れ込んでいるかは、←左の検索窓(PCの場合ね)に「マッスル・ショールズ」と打ち込んで記事検索していただければわかるかと思います。60年代後半にここのフェイム・スタジオで録音された、完璧なアレンジと完璧な演奏のバックがついたサザン/ディープ・ソウルの名曲の数々。もうどうしようもなく大好きな、僕にとっての最上のサウンドです。映画の邦題には「黄金のメロディ」と余計なセリフが加えられていますが(ま、原題どおり「マッスル・ショールズ」だけじゃ、何のことやらわからないけどね…)、彼の地の音楽の最大の特徴は「曲」ではなく、バック・ミュージシャンたちが奏でる「音」や「グルーヴ」だったので、せめて「黄金のサウンド」にすべきではなかったかと思います。

とはいえ。僕の知っているマッスル・ショールズは60年代のフェイム・スタジオのことだけで(あと、クインヴィ・スタジオが少々…)、70年代以降のマッスル・ショールズ・サウンド・スタジオのロックにおける功績や、彼の地が単なる田舎町なんてもんじゃなく「大自然に包まれた」ような土地であることや、リック・ホールさん(フェイムのオーナーであり、プロデューサーでありエンジニア)がただの頑固おやじではなくて、幾多の苦難を乗り越えた信念の男であること(ま、頑固おやじであることには変わりませんが…)や、ロジャー・ホーキンスやデイヴィッド・フッド、ジミー・ジョンソンらの一派が「スワンパーズ」などと呼ばれていたことなど、四半世紀も彼の地を「聖地」などと崇めながら、知らないことが山ほどあるということがよくわかりました。映画を見る前は「全然関係ないボノやアリシア・キーズは当然のことながら、ミックもキースも出てこなくていい!」などとほざいていましたが、そんな『ゴースト・ミュージシャン』みたいな内容の映画だったら日本で公開されるわけがない、というかまともな映画が撮れるような予算がつくワケはないのでした。フリーマン・ブラウンが全く出てこないなど、フェイム・ギャングの扱いが小さかったのは個人的にはちょっと残念ではありますが、多くの音楽ファンに、ほとんど名前すら知られていなかったマッスル・ショールズの音楽の、そしてリック・ホールという人間の素晴らしさを訴えることのできる、素晴らしい映画だったと思います。

映画の最後、フェイム・スタジオから出ていき、マッスル・ショールズ・サウンド・スタジオ(MSSS)を作ったスワンパーズの面々が、再びリック・ホールのフェイム・スタジオで録音するシーン。曲はボブ・ディランの「Pressing On」(原曲が録音されたのはMSSSだそうです)。歌ったのはアリシア・キーズさん。感動的なセッションに涙がこぼれました。「関係ないので出てこなくていい」などと思ったことを深く恥じ入ります。


新宿シネマカリテでの上映は今週で終了のようですが、立川シネマ・ツーでは上映中、さらに週末からはヒューマントラストシネマ渋谷とシネマート六本木で上映開始のようです。是非。僕ももう一度観に行きたい。

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2014年07月14日

Can't Count The Day / Jeb Stuart

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ジェブ・ステュアートさんという人は、メンフィス出身のソウル・シンガー。60年代から80年代頭くらいまでの間にシングルを20枚ぐらい出している実力者だそうですが、大きなヒットには恵まれず、アルバムは1枚も残していません。そういう人が山ほどいました。そしてそんな歴史の波間に消えていったシンガーたちが残したシングル曲には、有名アーティストに全く引けをとらない名曲!というのが結構あります。ソウル・ファンというのは、そんな無名の実力者が歌う隠れた名曲を探し出し、正当な評価を与えるという地道な作業を繰り返し、そこに喜びを見出しながらも、ほとんど誰にも相手にしてもらえない、心に哀しみを湛えた素敵な人々です。

気合も財力もなかったために、僕は正統的ソウル・ファンであるシングル・コレクターにならなかった根性なしのソウル・ファン崩れですが、今ではCDで手軽にそうした名曲の多くが聴けるようになりました。昔からシングルこつこつ集めていた方々には「悪いなぁ…」と思いつつも、日々充実した発掘生活を過ごしております。これも主には英KENTやGRAPEVINEといったリイシュー専門レーベルのおかげ。しかし思い起こせばLP時代、それこそ日本のお家芸でした。けん引したのは桜井ユタカさんと鈴木啓志さん。こつこつとLPを出してくれたのはVIVID SOUNDやP-VINEといった零細レーベル。しかし今やVIVID SOUNDは別の道へと進んでしまい、大きな会社に成長したP-VINEは「売れない」ディープ・ソウルなどにはあまり力を注いではくれなくなりました。いつのまにか僕の買うCDで最も多いのは英KENTになっています(P-VINEが国内盤として出しなおしたのも多いけど…)。しかし腐っても鯛、P-VINEが昨年久々に本気を出した『THIS IS REAL!』という2枚組CDはお家芸復活!徹頭徹尾ディープ・ソウルの重厚盤。ブルースがメインのレーベルであるMODERN/KENT(ややこしいけどこちらは米西海岸のレーベル)に残されたディープ・ソウルを丁寧に拾い集めた編集盤です。こんなことをするのはもちろん鈴木啓志さん(監修)。僕はここでまた1曲「Can't Count The Day」という名曲に出会ってしまいました。これだからやめられません。

その「Can't Count The Day」は1970年のマイアミ録音。メンフィス出身シンガーのマイアミ録音がLAのレーベルからというややこしい状況ですが、これはCLIMAXというレーベルからの音源買取りのようです。マイアミらしい明るい音をバックに激唱のジェブ・ステュアートさん。まるでドン・ブライアントさんばりの塩辛声、名シンガーだと思います。どっかでまとめてリイシューしてくれないかな。



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2014年06月28日

I'm In Love / Bobby Womack

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「I'm In Love」。1967年にボビー・ウーマックさんが書き、ウィルソン・ピケットさんがヒットさせた曲です。ピケットさんの6枚目のアルバム・タイトルにもなっている曲。ボビーさんも自身のアルバム『FLY ME TO THE MOON』(1968年)に自らの声で歌ったものを収めています。どこがアタマだかわからないような独特のリズム、いつまでもグルグルと頭の中を廻る印象的なギターのフレーズ、決して大げさでなくしみじみと沁みるメロディー。掛け値なしの名曲です。

後にアレサ・フランクリンさんも歌っていますし、ピケットの深い歌声によるバージョンは本当に名演だと思います。でも一番好きなのは作者御本人によるすこしガサツな歌いっぷり。「恋をしてるんだ」という歌詞はこれくらい斜に構えた歌い方がよく似合います。そして何といってもカッコいいのが、自身が弾くギター・ソロの前、自らかける「Now, play your guitar, Bobby!」の掛け声。しびれます。太い音、練られたフレーズ、この時代の彼の弾いていたギターは、あくまでも歌が主役であるソウル・ミュージックにおいて、バック演奏の最上のカタチだと思っています。



今度のブログではこの曲のことを書こう…、などと思っていた矢先、Twitterで今朝ボビーの訃報が飛び込んできました。「デマ」との噂も同時に流れてきて、にわかには信じられなかったし、信じたくもなかったのですが、時が経つにつれ様々な方面からニュースと哀しみの声が…。どうやら事実だったようです。70歳。闘病中とは聞いてはいましたが、本当に残念でなりません。つい先日亡くなったメイボン・ティニー・ホッジスさんに続き、我々は偉大なるソウル・ギタリストを相次いで失ったことになります。

思うように声がでないあなたの姿を見るのが辛くて、去年の最後となった来日公演を見送ったことが、やはり悔やまれてなりません。ごめんなさい。ありがとう。さようなら、ラスト・ソウル・マン。1995年の来日公演、トレード・マークのサングラスを外した際に垣間見たあなたの綺麗な瞳は、多分一生忘れません。
 
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2014年06月13日

I Found New Baby / Nat King Cole Trio

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ナット・キング・コールという人は、本人の中では首尾一貫してるのかもしれませんが、僕にとっては途中で全くの別人になってしまった人です。すなわち1940年代のトリオ時代と、50年代以降のポピュラー・スター時代。一般的に大方の人がご存じなのは後者の方。お父さんのレコード棚に「Mona Lisa」だの「Unforgettable」だのが収められたベスト盤があった、という方も多いのではないかと思います。その凶悪そうな顔つき(失礼!)とは裏腹な甘いベルベット・ヴォイスで歌い上げる大スタンダード・ナンバーの数々。日曜日の午後、自慢のステレオ・セットを近所にも聞こえるように鳴らすにはなかなかいい音源かもしれませんが、真に魅力的なのはお父さんの知らない方のナット・キング・コールさん。優れたジャイヴ・ボーカリストであり、アール・ハインズの流れを汲む極めて上手いピアニスト、そしてドラムレスの革新的トリオ・スタイルの発明者であります。

軽妙洒脱な「Straighten Up And Fly Right」に、しっとりとしたバラッドの「Sweet Lorraine」。トリオ時代はほんとに名曲ザクザクで、僕らのバンドも何曲かレパートリーにさせてもらってます。ご本人の歌とピアノももちろん素晴らしいのですが、肝はなんといってもオスカー・ムーアさんのギター。粒立ちのいい綺麗な音色と、アドリブでももともと作曲されていたかのような見事なフレーズ。最も好きなギタリストの1人です。

そのトリオ時代、1946年9月にミルウォーキーのサークル・ルームというお店でラジオ放送用に録音された貴重なライブ録音から、あえて3人の楽器の実力がよくわかるインスト・ナンバーで、オールド・スタンダード「I Found New Baby(いい娘をみつけた)」を。客のしゃべり声や食器の触れ合う音も響く、現場感たっぷりの録音ですが、火の出るような演奏を聴かせてくれています。ちなみに上掲ジャケットはこのラジオ用音源にボーナストラックを加えた『LIVE AT THE CIRCLE ROOM & MORE』。いい買い物でした。


トリオ時代を深く深く愛するが故に、50年代以降のポピュラー路線を「可愛さ余って憎さ百倍」と、ついついこき下ろしてしまいます。というかほんとにつまんないんだよね。サム・クックさんは憧れていたみたいですが…。

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2014年06月10日

Love Me / Dorothy Moore

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梅雨入りした、っと思ったらいきなりの容赦のない降りっぷり。で、雨止んだ、っと思ったら湿度80%超。音楽的には温度も湿度も高めが好みのはずですが、さすがに少々疲れ気味の6月中盤戦(いやただの呑みすぎか…)。ドロシー・ムーアさんの温度も湿度も適度に低めのサザン・ソウルで、体力回復を図ろうかと思います。

何度かここに書いているドロシー・ムーアさん。ミシシッピ州ジャクソンにどっかと居を構える南部ソウルの名門レーベル、MALACOの看板シンガーです。MALACOといえば一時はボビー・ブルー・ブランドさんだったり、ジョニー・テイラーさんだったり、Z.Z.ヒルさんだったり、往年の名シンガーの再就職先として、南部黒人中高年リスナー相手に手堅い商売やってたイメージもあります。が、ドロシー・ムーアさんは下積み時代はあるものの、ほぼMALACOの生え抜き叩き上げ。生まれも育ちものご当地ジャクソンっ娘です。声もお姿も今ではすっかり野太くなってしまったようですが、まだまだ可憐な歌声だった1977年シングルB面曲「Love Me」を…。


…という胸キュン・バラッド。肝は「what a lovely, such a lovely night for love」とコーラスが歌い上げる1分50秒過ぎからのあたり。ここで僕の胸の中を何かがこみあげてくるのです(苦笑)。この個人的殿堂入り名曲、作ったのはエディ・フロイドさん。そう、あの「Knock On Wood」のあの人です。歌はもう一つ(失礼!)のエディさんですが、ただの一発屋(失礼!)ではないのです。全くいい曲書きますね。

そうそう、MALACOの名作群がオリジナルのまま国内盤でCD化されるという嬉しいニュースがありました。売れんのかいな…と、ちょっと心配にもなりますが、まずはありがたいことです。とりあえず第1弾とのこと、続編も楽しみです。

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2014年05月28日

He Never Will / Gladys Knight

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何度もここに登場しているグラディス・ナイトさん。1944年5月28日生まれだそうですので、なんと本日70歳になりました。おめでとうございます。人生七十古来稀なり、そして今でも歌っています。本当におめでたいことだと思います。新譜も一応出したことだし、お元気なうちに是非とも来日していただきたいものです。

そんなワケで今日は朝からグラディス祭り。ひたすら聴いていましたが、持ってるCD数えてみたらば30枚弱もあるん(バカだねぇ…)、なかなか聴き終りません。でもって珍しいことにLPは1枚も持っていませんでした。アナログ・レコードを積極的に買ってたのは20代半ばまでだったと思うので、その頃まではほとんど興味がなかったっていうことか…。確かにこの人の歌の深い味わい、ケツの青いガキにはわからないかもしれません。

何度か書いていますが、グラディスの魅力はもちろんその歌唱力。でも女王アレサ・フランクリンさんみたいに圧倒的な力量でねじ伏せるような余裕ある感じではなく、むしろ目いっぱい、持てる感情の全てをつぎ込んで歌ってます!みたいなギリギリの感じがたまらないのです。エラやサラではなくてビリー・ホリディさんのココロ。「天才は溢れ出る。凡才は絞り出す。ゆえに天才なんてちっとも偉くない」というのは僕の持論ですが、まさにないところから絞り出して、自分をすり減らすような歌いっぷり。それこそが歌に血肉を与え、魂(ソウル)を吹き込むワケです。

ゴスペル・ソングで厳かに誕生日をお祝いしようと、引っ張り出したのはこんな曲。「He Never Will」。1998年、自らの芸能生活50周年を記念して神に捧げたアルバム『MANY DIFFERENT ROADS』に収められていた曲です。アルバム自体が地味な企画ものでヒットもしませんでしたから知ってる人も少ないと思いますが、僕は発売当時から大好きだった曲です。聴けば聴くほど胸に突き刺さる説得力。グラディスは自ら書いたアルバムのライナーでこの曲についてこう語っています。「この曲が伝える意図と、言わんとしているメッセージが、私は大好きなのです。私たち人間は、互いに失望を与え合う生き物です。また、互いに足を引っ張り合うこともあるでしょう。私たちは人間ですから、当然、短所もあれば、欠点もあるのです。この曲が言わんとしているのは、私たちが時々、他人の心の痛みに気づかずにいて、互いに傷つけあうこともある、ということです。しかしながら、神さまは決してその過ちを犯さないのです。」

(…と、ここにYouTubeで音源をアップしたのですが、残念ながらUMGさんにブロックされてしまいました。いい曲です。損はしないので、是非アルバム買って聴いてみてください…)

いや本当におめでとうございます。グラディス、愛しています。いつまでもお元気で!

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