2015年07月12日

The St. Vitus Dance / Horace Silver Trio

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Apple Musicなるサービスが始まっていますね。月額わずか980円でiTunes Storeに公開されている数百万曲が全て聴き放題だなどと言うのですよ。本当にありがたい時代だとも思いますが(まだ使ってないけど…)、もしもほんとにそれだけで何でも聴けるというのなら、高校生のころから現在に至るまで、毎月数千円から数万円をCDやLPの購入のために費やしていた僕の人生はなんだったのかなぁ…と複雑な気持ちも。

高校生の頃、都立のくせに校舎が大学の敷地内にあったので学食が利用できました。もう細かい値段は忘れちゃったけど、一番安いカレーが200円くらいだったかなぁ。なので、母親が忙しい、というか面倒くさい日は「今日は学食で食べてね」と何百円かのお金を渡されていました。まぁ若いので当然腹は減るワケですが、そこをグッと我慢して、学校前のパン屋の玉子ドーナツ50円也でなんとかやり過ごし、何日もかけて貯めた千円札を握りしめて下北沢のレコファン(中古レコ屋ね)へ。隅から隅まで吟味した上で(まぁそんなに回転よくないのでほとんどが「知った顔」でしたが)、1時間も悩んだ上で有り金はたいてLP1枚購入、などという学生時代でした。まっすぐ家に帰ってね(残金ないからね…)ステレオセットと対座して最低でも裏表2回ずつ。もちろんハズレもいっぱいあったワケですが、1回聴いただけで「ハズレ」なんて判断は悔しくてできなかったのですよ。

子どもの小遣いにも満たない980円で数百万曲聴き放題。いやそれ以前にYouTubeで何でも聴けちゃう時代。昭和の高校生からしたらまったく羨ましいとも思うけど、なんか、音楽ってのはそういうもんじゃないだろう! とも思うこの頃。骨身を削って演奏された音楽にはきちんとそれ相応の身銭を払って聴こうよと(悔しいんだね…)。ライブに行く、音楽ソフトを買う。みんな飯を喰うにはお金を払うでしょ。

今じゃあんまり聴かなくなっちゃったけど、ブルーノートの数々のアルバムは、なけなしの小遣いでせっせと集めたものです。ホレス・シルバーさんの『BLOWINl' THE BLUEA AWAY』には何度ステレオセットの前で正座したことか…(笑)。「Peace」に続き、大好きな「The St. Vitus Dance」を。こんなエキゾティックなメロディを書かせたら天下一品のホレス・シルバーさん。アーティストには、きちんとお金を払ってEPなりLPなりCDなりを買い集めることこそがリスペクトだと思いますが…、時代が違うのか…。


 
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2014年09月09日

Moonglow / Art Tatum Trio

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昨日の十五夜、東京は恨めしくも雨交じりの曇り空でした。でも本当の満月は本日、大きな月が上がっています。月に一献傾けようかとこんな曲。

It must have been Moonglow, way up in the blue
It must have been Moonglow that led me straight to you
「青空に浮かぶ月の輝きが、僕を君に導いてくれた…」と何ともロマンティックな歌詞の「Moonglow」。1933年にウィル・ハドソンさんが作り、アーヴィン・ミルズさんとエディ・デランジェさんが美しい歌詞をつけました。1934年にベニー・グッドマン楽団がヒットさせ、スタンダードに。古くさいっちゃあ古くさい曲だけど、昔の人はいい曲書くなぁ…とも思います。

歌入りでもインストでも、様々な人が様々な名演を残しているこの曲、多くはしっとりとムーディに演奏されますが、今夜はコロコロと転がるようなジャイヴィなテイクで。ピアノを弾くのは「巨匠」アート・テイタムさん。続いて出てくる何とも楽しくなっちゃうギターはタイニー・グライムスさん。そしてベースのアルコ弾きはスリム・ゲイラードさんとのコンビでもおなじみ、スラム・ステュアートさん。ずいぶん前にもここに書いたことのある、超絶技巧と歌ゴコロに遊びゴコロを兼ね備えた(個人的には)史上最強ピアノ・トリオです。額に汗して思いっきり音符を叩き込む巨匠に対して、「まぁまぁ肩の力を抜いて…」と言わんばかりのフレーズで応えるお茶目な2人。巨匠がどう思っていたかは知る由もありませんが、硬と軟、何とも絶妙なメンツだと思います。録音少ないのは何とも残念がいずれも名演です。以前に『THE COMPLETE TRIO SESSIONS』なるCDが2枚出ていたみたいなんだけど、今では手に入りません。未発表含む全曲集とか再発してくんないかな…、と月にお願い。



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2014年04月05日

Le Coiffeur / Dexter Gordon

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ジャズです。大好きな自転車ジャケットのデクスター・ゴードンさんで。

デクスター・ゴードンさんを好きになったのは映画『'ROUND MIDNIGHT』を観てのこと。いつの映画だっけ?と思って調べてみたら1986年、僕がまだハタチ前の事でした。酒とドラッグに溺れた末にたどり着いた異国パリの地で、自身の熱心なファンに巡り合い、心の交流が生まれる中で自らを少しずつ取り戻す、あるジャズ・ミュージシャンのお話。主人公の大物サックス奏者デイル・ターナー(フィクションです)を演じたのがデクスター・ゴードンさんでした。「レディ・フランシース…」とつぶやくように彼の信望者に語りかける、おそらくは本当に酒とドラッグで潰したのであろうデクスターのダミ声が、いまでも耳の奥に残っています。

デクスター・ゴードンさんは、1940年代にビ・バップの洗礼を受けた初期の世代のバップ・テナー。現実でも大物サックス奏者です。ビリー・エクスタイン楽団でジーン・アモンズさんとテナー・バトル・チームを組んでいたこともありました。男らしい大らかなトーンと、16分音符を安易に使わない、ちょっと聴くと「もたってる」と思われそうなどっしりとした後ノリのアドリブが魅力的なテナー吹きです。

実際にドラッグやアルコールに溺れ、ニューヨークを離れ、コペンハーゲン他の欧州の地で60年代の多くを過ごしたデクスター・ゴードンさん。デイル・ターナーのモデルは一応バド・パウエルさんとされていますが、デクスター自身も多分に入っていることと思います。そのヨーロッパ在住時代にデクスターはブルー・ノートから何枚かアルバムを出していますが、上掲ジャケットの『GETTIN` AROUND』は、ヴィブラフォン奏者で、映画『'ROUND MIDNIGHT』にも実名で出演していたボビー・ハッチャーソンさんの参加によりとてもカラフルなアルバムになりました。アルバムのB面最後に収められた「Le Coiffeur」は彼のフランス暮らしが作曲に影響を与えた(?)愛らしい一曲。フランス語で「美容師」という意味だそうですが、とってもおしゃれでお茶目な曲。バリバリとアドリブと闘う『OUR MAN IN PARIS』みたいなアルバムでは決して聴くことのできない、男らしいデックスが垣間見せたウィンクのような、愛おしい曲です。


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2014年02月11日

Jamilah / Houston Person

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投票率を間違いなく十数ポイントは下げたであろう東京のドカ雪も、あっという間に消えつつあり、暦の上では立春も過ぎていました。まだまだ寒いけどね、今年はあと何度大黒屋の湯豆腐が食べられるかなぁ…などと去りゆく冬を思ってみたりするのです。

西荻の酒屋で手に入れた「初亀純米吟醸」のお供にと、久しぶりにレコード棚から引っ張り出してみたアナログLPは、テナー+オルガンのコテコテ・ソウル・ジャズ。ヒューストン・パーソンさんの1969年プレスティッジ盤『GOODNESS』でした。表題曲はコンガがチャカポコ鳴り渡るブルース・チューン、典型的なコテコテ・ナンバーですが、ちょっとイカしているのがB面2曲目の「Jamilah」。16ビートのメロウでクールなグルーヴのこの曲、きれいな音色のアルトでも乗っかっちゃうとまるでフュージョンになっちゃうところ、ブリブリと吹きまくるのは豪快かつ男くっさいパーソンのテナー。黒々としたぶっとい音には惚れ惚れします。ちょっとお調子に乗り過ぎ気味のベースマンをカッティングでぎろりと抑えるのは職人ギター、ビリー・バトラーさん。こちらも惚れ惚れしちまいます。7インチにもカットされている名演。

ヒューストン・パーソンさんは1966年の『UNDERGROUND SOUL』が初リーダー作。アモンズだ、ロックジョーだ、コブだ、ウィリス・ジャクソンだ、ジミー・フォレストだ、ラスティ・ブライアントだ、キング・カーティスだと、元ホンカーやバッパーの多いプレスティッジのコテコテ・テナー吹きオールスターズにあっては、遅れてきた青年、というか遅咲きの苦労人です。しかし60年代末から70年代のプレスティッジ粗製乱造(失礼!)ソウル・ジャズ・セッションに次から次へと顔をだし、すっかりこの時代の中心人物となりました。その後、ミューズの顔となり、お歴々がみんな死んじまった今となってはすっかり大御所、ソウル・ジャズの生き字引のような存在です。


セーター頭まで被って顔だけ出して「ジャミラ〜!」なんて遊んだことがあるあなたはきっと僕と同世代です。地球に見捨てられた宇宙飛行士の哀しいお話なんだよね(たしか)…。
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2013年08月20日

In A Sentimental Mood / Duke Ellington & John Coltrane

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いろいろと仕込んできた夏のイベントが日曜日で終わってしまい、後始末も終了して気の抜けたような火曜日。気がつけば海にも、プールにすらも行かぬまま夏が終わろうとしています。そんなことは数年前まではあり得なかったんだけどな。お腹も背中もなまっちろいまま、ひたすらビールを飲みながら枝豆と冷奴ばかり喰っているのです。歳相応の夏の過ごし方? ツクツクボウシの声を聴きながら、ちょっと寂しさを覚える夏の終わりなのです。

「In A Sentimental Mood」。以前にロリンズさんのテナーでご紹介したデューク・エリントンさんの名曲を、今宵は御本人のピアノとコルトレーンのテナーで。こんな駄ブログには似つかわしくない、誰もが認める名演です。

実は白状すると、僕はコルトレーンの単独リーダー名義のCDを1枚も持っていないという(!)テナー吹きの風上にもおけない人間です。いやLPだったら何枚か試しに買ってみたものがありますが、全然好きになれなかった。前にも何度かここにも書いたような気がするけど、あのマウスピースをちゃんと咥えていないような音がどうにも生理的に受け付けないのです。その上で16分音符吹きまくられちゃうと「ちょっとカンベンしてくれ!」。彼の生み出した音楽の偉大さを全く理解できていないわけですが、理解できなくていいんだオレは。どうせホンカーだし。酒呑みだし。

しかしこの曲のこの演奏だけは、唯一、四半世紀前から何度も何度も繰り返し聴いています。心が反応するのです。この寂寥感。そしてあまりにも美しいピアノの音色。偉大なる大先輩との共演に委縮したのか、あるいは噂のとおりマウスピースの調子が悪かったのか、コルトレーンのテナーがいつものようには「五月蠅くない」名演。珍しくCDで買いなおしたアルバムですが、我が家のCD棚ではエリントンの欄に入っています。そもそもコルトレーンの欄がないのです。



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2013年03月24日

Jumpin' At The Woodside / Arnett Cobb

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本日3月24日は敬愛してやまないコブさんの24回目の命日でありました。ついこの間のような気もしていましたが、もう2回りもしてしまったのですか。僕も歳をとるわけです。

最も好きなテナーはもちろんコブさん、最も好きなギターの一人がタイニー・グライムスさん、最も好きなピアノはロイド・グレンさん…ではないけれど、メンバーみただけで嬉しくなっちゃうアルバムから、ご存じベイシー楽団十八番の「Jumpin’ At The Woodside」を。コブさんもひそかに十八番です。ジャケットに踊るフォントを見ただけで、わかる人にはすぐわかる黒&青盤『THE DEFINITIVE BLACK & BLUE SESSIONS : JUMPIN’AT THE WOODSIDE』から。コブさんもタイニーさんも絶好調とは言い難い1974年作ですが、この人たちが一緒に演っているというだけで十分なのです。熱燗つけてテキサス方面に献杯の夜。



【過去のコブさん】
Just A Closer Walk With Thee / Arnett Cobb 
I Got Rhythm / Arnett Cobb
Flyin' Home / Arnett Cobb
Satin Doll / Arnett Cobb
On The Sunny Side Of The Street / Arnett Cobb

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2013年02月03日

Zero / Julian Dash

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強力なスウィンガーであったジュリアン・ダッシュさん。と言ってもほとんどの人は「?」だと思います。僕もほとんど知りません。でもこの曲は何故か前から愛聴曲、1955年録音の「Zero」。霊能犬のことではありません。

アースキン・ホーキンス楽団で長らくメイン・テナーを務めた人らしい…、けどちゃんと聴いた覚えはほとんどありません。ホンカーというほど野卑でなく、中間派ややブルース寄りというところでしょうか。と書いてみたりしましたが、この「中間派」という言葉。ジャズ・ファン以外にはほとんど通用しませんでした。初期のいわゆるニュー・オーリンズ・スタイルとバップ以降のモダン・ジャズとの中間だから中間派。大橋巨泉さんが名付けたのだそうです。なんちゅうか本中華。ま、いいや。その中間派ややブルース寄りテナー吹きのジュリアン・ダッシュさん。リーダー作はあまり残していません。この曲も「エディちゃん」(平板アクセントでね)ことエディ・チャンブリーさんとジョー・トーマスさんの豪華(?)寄せ集めのCDに収められていました。スペインはバルセロナのblue moon社による毎度おなじみの重箱の隅つつき盤です。


疾走感あふれるブロウ。たまにもたつくところはご愛嬌。この曲のダッシュ感はリズム隊の力によるところも大だと思いますが、ご本人もなかなかの実力者だと思います。しかしながらほぼ無名。そんな人の無名なこんな曲が、まさかYouTubeに落ちてるとは思いませんでした。世界には変わった人がいるものです。いや、あたしもか。

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2013年01月26日

My Way / Gene Ammons

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昔々、サックスを吹き始めた頃、先輩から「タンギングは羊羹のようにやれ!」と教わりました。つまり羊羹に包丁を入れるように、音は隅から隅までしっかり出したまま、タンギングの瞬間だけをスパッと切るのだ、という意味ですが、僕はこれを音の質の話と勝手に解釈しました。すなわち「音は隅から隅までしっかり詰めて、黒く・ぶっとく・重く出すもんだ」と。そのとらやの羊羹おもかげのようなブリッと黒い音の最高峰が、ジミー・フォレストさんと「ボス・テナー」ことジーン・アモンズさん。ウン十年も吹いていても自分ではなかなか理想の音は出せませんが、この人たちの音は聴くたび本当にほれぼれします。

49歳で早逝したアモンズさんには晩年にあたる1971年のアルバム『MY WAY』から同名曲を。そう、あの「マイ・ウェイ」です。結婚式などでちょっと歌自慢の新郎のおじさんかなんかに朗々と歌い上げられちゃったりすると本当にげんなりしちゃう曲ですが、実はよくできた曲だと思います。アレサの未発表集に収められたバージョンを聴いて初めて僕も気づきました。そしてこのボスのバージョン。最初にアルバム買ったとき(学生時代だったかなぁ)には「げっ!ムード・テナーじゃん!」と思った覚えがありますが、まぁケツが青かったのです。今じゃ「ムード・テナー結構じゃないの」と思える歳(!)に僕もなりました。もちろんアモンズさんが単なるムード・テナーで終わるワケはなく、曲の後半では汗とつばきが飛び散るようなブロウを存分に聴かせてくれるのですが。決して聴き手に寄り添わない、男気溢れる「My Way」です。


学生時代からバイブルのように読み倒して、今じゃボロボロになった「ジャズ批評48号・特集テナー・サックス」(1984年刊)というのが本棚にあります。このメインの記事が40数名のテナー吹きを「主要テナー奏者のワン・ポイント・ディグ!」として紹介したものですが、この中にジーン・アモンズさんがいません。チャーリー・ラウズさんやラッキー・トンプソンさんまで入っているのに、ふざけんじゃねぇよ、と思いました。黒姫山が載っているのに北の湖が載っていないようなもんです。ま、30年前の日本の「おジャズ」評論家の耳はそんなもんだったのかもしれません。エンパイア・ステイト・ビルディングのようにでっかくてよく歌う、と喩えられたアモンズさん。僕にとっては永遠の「ボス・テナー」なのです。
 
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2013年01月19日

East St. Louis Toodle-Oo / Duke Ellington & His Orchestra

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かなり古い曲を一曲。1927年といえば昭和2年、今は亡きうちの親父の生まれた年です。偉大なるピアニストにしてコンポーザーにしてアレンジャーにしてバンド・リーダーだったデューク・エリントンさんですが、このころは偉大でも何でもなかったわけです。20世紀の巨匠への道の第一歩はこの曲から。1940年代に「Take The A Train(A列車で行こう)」が生まれるまでエリントン楽団のテーマとなっていた曲「East St. Louis Toodle-Oo」。名曲だと思います。

ピアニストではありますが「バンドが私の楽器」と語っていたエリントンさん。メンバーそれぞれの個性を知り尽くしたうえでの作編曲。この曲も偉大なるトランぺッター(このころは偉大でも何でもなかったわけですが…)バッバー・マイレーさんがいなければ生まれなかった曲でしょう。おどろおどろしいイントロに切り込んでくるのは、マイレーさんの強力なプランジャー・ミュート。途中からメジャーに展開してソロを引き継ぐのはトロンボーンのトリッキー・サム・ナントンさん。そしてリズムを支えるのはフレッド・ガイさんのガチャっと刻むバンジョー。まだジョニー・ホッジスさんもバーニー・ビガードさんもハリー・カーネイさん(加入直前?)もいない頃ながら、個性には既に事欠きませんでした。


この録音ののち、1927年12月にデューク・エリントンさんはバンドを引き連れてニューヨークはハーレムにある白人専用高級クラブ「コットン・クラブ」に進出し、専属楽団として快進撃を始めます。武器はバッバー・マイレーさんのラッパを中心とする「ジャングル・サウンド」。後にアル中でバンドをクビになるマイレーさんですが、そのエッセンスは後任のさらに偉大なる(ばっかだな)トランぺッター、クーティ・ウィリアムスさんに引き継がれていきました。

映画『THE COTTON CLUB』が公開されたのはまだ僕がまだ高校生の頃でした。エリントン楽団が出演していた頃の同クラブを舞台にした映画で、監督はフランシス・コッポラ(あ、500円でDVD売ってる。買おうかな…)。何だかまったくわかっていないながら「ジャズ」というものに大きな妄想を描き始めていたころ、勇んで観に行ったし、サントラのアルバム(LPね)まで買いました。でもね、まだケツが青かったんだな。今聴くと素晴らしいそのアルバムは、10年ほどレコード棚に眠っていたのです。
 
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2012年12月31日

Just A Closer Walk With Thee / Arnett Cobb

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朝から大掃除をしていましたが、晩の宴までにすべてを終わらせることは不可能だろうと判断したので、一休みしてこうしてPCの前に座ってみたりして。あと数時間で今年も終わりです。

まるでジェットコースターに乗っているような1年でした。昔からの音楽仲間が2人、相次いで若くして亡くなりました(合掌)。それがきっかけ、だったのかどうか、長らく会っていなかった友人との親交が復活したり、また、つまらないことで二十年来の友人を失ったり。仕事の方も、詳しくは控えますが、過去最大振れ幅のアップ&ダウン。でも合間をぬって焼津と岡山に阿房列車を出したりして…、楽しかったな。音楽の方では、英KENTさんから次々と出されるディープ・ソウルのリイシュー群に舌鼓を打ち、ボビー・ウーマックさんベティ・ライトさんビッグ・ジェイ・マクニーリーさんらの素晴らしいライブを堪能しました。でも小さなライブハウスで観た、いくつかの国内ミュージシャンの方が印象に残っているかもしれません。そして今年も、エタ・ジェイムスさん、ジョニー・オーティスさん、ホイットニー・ヒューストンさんチャック・ブラウンさん、ドナルド・ダック・ダンさん、たくさんの偉大なる才能が失われました(合掌)。生まれて初めて「デモ」に参加し、生涯もっとも気合の入った選挙は全くの残念な結果に。そして師走になってからは狂ったように毎晩毎晩湯豆腐と熱燗に明け暮れておりました。そんな年。良いこともあり、悪いこともあり。

今年のお別れの一献は、最も敬愛するテナー吹き、アーネット・コブさんの、随分以前にご紹介した「On The Sunny Side Of The Street」も収録されている一番好きなライブ盤、『LIVE AT SANDY’S』から、「Just A Closer Walk With Thee」を。「主よ 御側を歩ませ給え」、以前にダーティ・ダズン・ブラス・バンドによるテイクを紹介した古い黒人霊歌です。厳かに、歌心深くテーマを吹き始めるコブさんですが、ソロ・パートに移ると元祖テキサス・テナーの面目躍如、決して曲をぶち壊すことなくも、これでもか!というエモーショナルなブロウを聴かせてくれます。20数年前にぶちのめされて以来、いまでも聴くたび鳥肌の立つ一曲。


さてさて今年も毎度のごとく、何もできぬまま暮れていきます。お掃除もまだ残っていますし、湯豆腐と熱燗の時間も近づいてまいりましたので、この辺で。いろんなところのいろんな皆様方、不義理をお許しくださいませ。また、今年もこちらで一献おつきあいいただきました奇特な皆様には感謝申し上げますとともに良いお年をお迎えください。チャオ!

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2012年11月30日

Autumn In New York / Sonny Stitt

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ふと気がつけば今日で11月もおしまい。ということは晩秋最後の晩。明日からは長くて暗くて辛くて厳しい冬が始まるのです。これから菜の花が咲くまで、ひたすら熱燗と湯豆腐で耐え忍びます。でもそれは結構理想的な生活かも、なんて思ったりもして。忘年会もいっぱいあるしね。

秋の最後にこんな曲。特に大好き!ではないんだけど、どうにも高打率でついつい買ってしまうのはソニー・スティットさんのアルバム。テナーでもアルトでもこの人のワン・ホーンにはほんとにハズレがありません。以前にもビリー・ホリディさんで紹介した「ニューヨークの秋」を。ぶっとい音のアルトで歌いまくる、切なくなっちゃう演奏です。

…と、音源をYouTubeにアップしたのですが、早々にUMGさんにブロックされてしまいました。残念。ついさっきあげたばっかりなのにチェック早いですね。というか度量が狭いよな、とも思うけど、ま、権利は権利です。聴いてみたい人はアルバム『PERSONAL APPEARANCE』(1957)買ってください。他にも名演満載、損はしないと思います。アマゾン川に現時点で2点在庫ありだそうです。
 
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2012年11月23日

Goodnight, It's Time To Go / Jack McDuff

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ビッグ・ジェイたまげたね。でも今日は別のおはなし…。

僕の出た大学は専門学校のような単科大学だったので、当時の1学年の人数は300人弱。大型私立大学とは比べ物にならない過疎の村のようなキャンパスでした。当然絶対数が少ないので趣味の同じ人間に出会える確率はぐっと少ないワケです。「つまんねぇ奴ばかりだな…」と自分の人見知りを他人のせいにして、ほとんど誰とも口をきかずにひと月くらいたった後、そのオルガン弾きの大男と知り合いました。どこでどうやって会ったのかはもう思い出せません。「ブルースとか、やらはるんですか?」と、部室の外で泥臭いフレーズを吹いていた時に声をかけられたのかもしれません。腐れ縁が始まりました。

メガネ、ヒゲ、下駄履き。当然先輩だと思っていましたが、あとできいたら向こうも同じことを思っていたのだとか。やわらかなイントネーションの京都弁で、背は高いのに腰は意外に低く、でも嫌味を言わせりゃ一級品(笑)。日本のブルースの本場からやって来たそのオルガン弾きは、当時黒人音楽の知識なら誰にも負けない、と自負していた僕の鼻っ柱を見事に叩き折ってくれました。ブルース、ソウル・ジャズ、ディープ・ソウル、授業なんかほとんど出もせずに、タバコの煙でもうもうとした汚ったねぇ部室で、古い黒人音楽の話ばかり、飽きもせずに熱く語り合ったものです。

一緒にやったバンドはもう数え切れません。モータウンからなんちゃってカントリー・ブルース弾き語りデュオまで(!)。当時は僕も彼も決してテクニシャンでなく気持ちで演るタイプ(笑)。そういうところも似ていたのかもしれません。金はなく時間だけはいくらでもある学生時代(練習だのバイトだのすりゃいいのにね…)、授業にも出ず家にも帰らず支離滅裂な生活をしておりましたが、部屋に泊めてもらったり、パチスロ教えてもらったり(プロでした)、呑めない酒をつき合わせたり(今では僕より呑めるかもしれませんが…)、随分世話になりました。借金もいっぱいしたよ。全部返したかな…。

ソウル・ジャズはもともと好きでしたが、どっぷりとはまったのはオルガン弾きだった彼のせいかもしれません。テナー+オルガン=コテコテ。お互いジミー・スミスみたいな上手いオルガンよりも、よりくっさいやつが好き。行き着いた先はもちろんブラザー・ジャック・マクダフさんでした。1961年の同名アルバムから臭い立つような「Goodnight, It's Time To Go」を。


彼はその後、きちんと練習してきちんとジャズを演奏するようになり、相変わらずホンカー一辺倒の僕とは一緒に演る機会がだんだん減っていきました。お互い本音を言いあえる仲(というかついつい言っちゃう)、ぶつかることもすれ違うこともありましたが、今でも根っこは一緒だと思っています。そして彼と出会わなければ僕は岡山のあの人たちとも、知り合うこともなかったでしょう。音楽とお酒は人と人とをつないでくれるのです。

本日(23日)、彼の結婚式が行われたそうです。長い独身生活でしたが、40代も半ばにしてようやく人生の伴侶を見つけたのです。本当にめでたい、嬉しいことです。残念ながらつまらないボタンのかけ違いがあり、直接祝福には行けませんでしたが、独り曇った夜空を見上げ、東北の地酒で祝杯をあげました。おめでとう。よかったよ。

「Goodnight, It's Time To Go」。もう眠くなっちゃった。明日も早いし、そろそろしょんべんして寝るよ。
 
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2012年09月29日

Easy Living / Wardell Gray

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遥か彼方の高校生の頃。テナーを吹き始めジャズをかじり始めました。「ロリンズがいいのはよくわかった。他には何を聴けばいい?」と独り悩んでいた頃に、下北のレコファンだかどっかの中古屋で巡り合ったのが上掲ジャケットの『Wardell Gray Memorial』のVol.1とVol.2でした。もちろんLPです。マサコに通い始めるよりも前、まだコブさんにもアモンズさんにも出会ってないグレ始める前の話です。持ってるLPの枚数もまだまだ少なく、スピーカーの前に正座するような気持ちで聴きました。僕にもそんな時期があったのです。

ワーデル・グレイさんは1940年代後半のビ・バップ期を疾走、一瞬のきらめきを残して1955年に夭逝しました。ラスヴェガス巡業中に郊外の野原で死体で発見されたそうです。麻薬が彼に何かをしたのでしょう。いや彼が麻薬に何かをしたのでしょうか。レスター・ヤングとチャーリー・パーカーを足して2で割ったようなフレーズを吹きました。「バップ・テナー」とはまさに彼のことです。

早い曲での火の出るようなソロももちろん素晴らしいのですが、バラッド・ナンバーでの温かみ溢れるテナーを。「Easy Living」。1937年に同名の映画の主題歌として書かれ、ビリー・ホリディさん「What A Little Moonlight Can Do」とともに無名時に歌いスタンダードにした曲です。アル・ヘイグさんのピアノ、トミー・ポッターさんのベース、ロイ・ヘインズさんのドラムというパーカーを支えたリズム・セクションをバックに、ワーデル・グレイさんが素晴らしい「歌」を聴かせます。


静かにフローリングに横たわりたくなるようなこのナンバー。リビングブラザーズのテーマに決めました。
 
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2012年08月25日

Something / Charles Kynard

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真昼の日差しはまだまだ強烈ですが、コンビニ行けばビールの棚には「秋味」が。ペナント・レースも大変残念ながら早くもマジック点灯。秋風が吹き始めそうな心をもう一度熱くしようと、ジャズ・ファンクなど聴いてみているのです。

黒縁メガネのインテリジェンスな風貌ながら、いったん火が付くと知性のかけらもないフレーズを弾きまくるオルガン弾きのチャールズ・カイナードさん。1960年代末〜70年代にかけて次々と現れた愛すべきファンキー・オルガン有象無象の一人です。上掲アルバム『WA-TU-WA-ZUI』(1970)は、ヴァージル・ジョーンズさんのトランペットに、ラスティ・ブライアントさんのテナー、メルヴィン・スパークスさんのギター、ジミー・ルイスさんのベースにアイドリス・ムハマッドさんのドラムという、おんなじようなメンツでいったい何枚アルバム作っちゃったんだろうという、コテコテ・ファン絶賛のプレスティッジ10000番台オールスターズ。ま、このあたりのアルバムはどれを聴いても大体おんなじような印象なのですが、このLPのハイライトはなんといってもB面アタマの「Something」。この曲だけドラムがバーナード・パーディさんに代わり、より切れ味鋭いジャズ・ファンクに染め上げられてますが、元唄はあの恐れ多いグループのあの曲。ジョージ・ハリソンさんの一世一代の名曲にこんなアレンジ施しちゃうのは犯罪的行為のような気もしますが、カッコいいので許しちゃう。


テーマだけ聴くとトホホな感じのホーン・アレンジに力が抜けますが、ソロに入ると「これでもか!」と繰り返すカイナードさんのコテコテ・フレーズにやられちまいます。延々と引いては満ちるグルーヴ。このしつこさがファンクです。たっぷり3コーラスの弾き倒し、10分近くある曲にも関わらず、ソロ・パートを与えられなかったラッパやテナーの気持ちは如何ばかりかとも思ってしまいますが…、ライブだったらたっぷり30分以上は演るんでしょう。こんなん本場のクラブで聴いてみたいのです。

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2012年06月09日

Baltimore Bounce / Al Sears

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朝からYouTubeの森の奥深くに潜り込んで彷徨い歩いていたら、こんなものに出会って嬉しくなっちゃっいました。アル・シアーズさんの「Baltimore Bounce」。10年以上前かなぁ…に買った『GROOVE STATION』とかいうコンピ(アル・シアーズさん、ワイルド・ビル・ムーアさん、プレストン・ラブさん、ファッツ・ノエルさん、ジェシー・パウエルさんの5つのセッションを集めたもの)の冒頭に収められていた曲。皆さん知る人ぞ知るホンカー系ですから、単純且つ快楽堕落的演奏が並ぶ中、比較的端正な面構えのジャズで妙に気に入っていた曲なのです。

ビッグ・アル・シアーズさんは、かのデューク・エリントン楽団で1944年にベン・ウェブスターさんからその座を引き継ぎ、1949年にポール・ゴンザルベスさんにその座を譲るまで、約5年間看板ソリストを務めた、っちゅうくらいだからそんじょそこらのやさぐれホンカーとはスジが違うのです。ですが…。この「Baltimore Bounce」は、51年にジョニー・ホッジスさん名義の「Castle Rock」で一発当てた直後の、自己名義録音。ジャズとR&Bのはざま感がなんとも心地よいのです。


その後、アル・シアーズさんはアラン・フリード(ロックンロールの生みの親的DJ)のロックンロール・オーケストラに参加し、ぐれます(!)。まぁいい傾向です。この時の映像(映画『Rock, Rock, Rock』の1シーン)がここで観られます。演出の都合もあったろうとは思いますが、知性のかけらもありません(失礼!)。6月9日ロックの日。外は雨です。
 
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2011年12月31日

What A Little Moonlight Can Do / Billie Holiday

billie Holiday.jpg

本を100冊くらい捨てました。あぁ気持ちいい。でもそれ以外は積み残しのまま酒に呑まれてふと目覚めれば大晦日。せめてもう2〜3日は欲しい、いやいやえんどなイヤーエンドなのであります(?)。その積み残しのひとつを終わらせるべくこのブログにて年末のご挨拶。

とんでもなかった2011年。Twitterをはじめたせいなのか、訃報ばかりが目につきました。古澤良治郎さん、クレイ・ハモンドさん、マーヴィン・シーズさん、与那嶺要さん、坂上二郎さん、ロリータ・ハロウェイさん、パイントップ・パーキンスさん、ラティモア・ブラウンさん田中好子さん、団鬼六さん、コーネル・デュプリーさん、児玉清さん、ギル・スコット・ヘロンさん、レイ・ブライアントさん、ベニー・スペルマンさん、クラレンス・クレモンズさん、ピーター・フォークさん、ジェリー・ラガヴォイさん、宮尾すすむさん、原田芳雄さん、中村とうようさん、エイミー・ワインハウスさん、小松左京さん、ジョー山中さん、日吉ミミさん、杉浦直樹さん、ワンガリ・マータイさん、シルヴィア・ロビンソンさん、スティーブ・ジョブズさん、柳ジョージさん、北杜夫さん、ジョー・フレイジャーさん、隆の里俊英さん、キラー・カール・コックスさん、立川談志さん、西本幸雄さん、Jブラックフットさん、ハワード・テイトさん、ヒューバート・サムリンさん、吉田カツさん、森田芳光さん、上田馬之助さん。RIP。そして東日本大震災。パンダは来たけど多くのものを失くした年です。個人的には懇意にしていただいていた妻の伯母と伯父も相次いで亡くなりました。さらにオサマ・ビン・ラディン氏にカダフィ大佐に金正日総書記。世界はどんどん小さくなっていきます。

多くの方々がお亡くなりになりましたが、彼らが残したものがその輝きを失うわけではありません。52年も前に亡くなられたビリー・ホリディさんの今も輝き続ける作品群の中から、もう大好きな「月光のいたずら(What A Little Moonlight Can Do)」で、明るく今年のお別れ。人生の辛苦を背負い込むように重苦しく歌う印象のあるビリー・ホリディさんですが、この曲は1935年のほぼデビュー作。バラ色の人生が待ち受けているかのように、はじけるような幸せを噛みしめて歌う20歳に、テディ・ウィルソンさんのピアノにベニー・グッドマンさんのクラリネットも踊ってます。


さてさて今年も毎度のごとく、何もできぬまま酒に呑まれて暮れていきます。一応お掃除もしなくちゃいけないのでこの辺で。いろんなところのいろんな皆様方、不義理をお許しくださいませ。また、今年もこちらで一献おつきあいいただきました奇特な皆様には感謝申し上げますとともに良いお年をお迎えください。チャオ!
 
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2011年09月07日

Corner Pocket / Count Basie And His Orchestra

April In Paris.jpg

朝晩はすっかり涼しくなりましたが、まだ暑かった8月の終わり、東北地方大人の修学旅行レポートの続き。陸前高田市の惨状に呆然としたまま一関へ。ただぽかんと口をあけて見て来ただけの自分を恥じつつ、傷心のまま車を走らせます。あぶないあぶない。どうしても行きたいところがもう一つあってコースを組んだんだけど、あの風景を見た後ではどうにも気分が高まりません。でも、せっかくだからと気持ちを切り替え、市営パーキングにレンタカーを停め深呼吸。一関といえば、お隣の平泉が世界文化遺産登録決定!ですっかり盛り上がっていますが、そのあたりには目もくれず、こちらも日本が世界に誇るジャズ文化遺産、「日本で一番音がいい」と言われている、ジャズ喫茶「BASIE」へ。かくして僕も「『ベーシー』の客」になりました。

二重の重たい扉をあけると、そこは音の洪水。土蔵を改良して造り出した薄暗くも格調高い店の奥に鎮座するのは、どでかいJBL。でかい音だけど、やかましいという感じが少しもしません。とんちんかんな僕の耳(先日また左右の耳のチューニングが半音ずれる、ということがありました…)ですが、さすがにすげぇ音だとわかります。未体験の音世界。いやこれは耳で聴いてるんじゃなくて体中の皮膚がその振動を感じてるのね。ベースがね、もう「ナマより生々しい」のです。漂うのは演奏者の汗の匂い…。

という興奮の体験ではありましたが、その前に見てきた風景に心はざわざわと静まらず、音に集中ができません。LP片面3枚ほど聴いたところで退散。もったいない。いずれも50年代くらいの見事なハード・バップでしたが、どうせならこの音でビッグ・バンドが聴きたかったなぁ…。

残念ながら大学の弱小ジャズ研ではメンバー足りず組めませんでしたが、そのためなおさら学生時代はフルバンドで演ってみたいと思ってました。当時もっぱら聴いたのはやっぱりウィリアム・カウント・ベイシーさんのバンド。今でこそオールド・ベイシー・バンドが好きですが、当時はなんだか敷居が高く、もっぱら50年代再結成以降の諸作を聴いておりました。まだ高校生、ジャズが「憧れ」の世界だったころ、最初に買ったのは上掲の麗しきジャケットの『APRIL IN PARIS』でした。なかでも惚れこんだのがミスター四分音符、フレディ・グリーンさんの作った「Corner Pocket」。押しと引きの妙。すんげぇフォルテッシモと静謐なピアニッシモにやられます。とつぜんミュート・トランペットのユニゾンになるとこが何とも可愛い。サド・ジョーンズ〜ジョー・ニューマン〜フランク・ウェスと続く作曲されたかのようなソロにもため息が出ました。


※埋め込み禁止のようですので直接YouTubeでご覧ください。

9月11日に一関のお隣の世界文化遺産のひとつ、毛越寺にてカウント・ベイシー・ビッグ・バンドが復興支援ライブを行います。もちろん本来のバンド・リーダーはいませんが、きっとこの美しきステージが羨ましくなって、あの世からちょこっとピアノを弾きにくるはず…。そもそもその店名のとおり、ウィリアム・カウント・ベイシーさん本人と交流のあったベイシーのマスター(菅原正二さん)を中心とする、「岩手ジャズ喫茶連盟」が主催したこのライブ。震災からちょうど半年後にして、あのテロからはちょうど10年後。行きたいなぁ、と思う美しい催しですが、もう財布が行かせてくれません。
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2011年06月24日

Night Train / Rusty Bryant

night train now.jpg

暑いのは好き、などと常々書いてきましたが、それはお休みの日の話です。昨日一昨日のエアコンの使えない職場にはさすがにまいりました。でも本日はお休み(!)。午前中にスタジオ入って個人練した後は、恒例の「俺のベンチ」にて青空缶ビール&サンドウィッチ。強めの風が心地よく、強い日差しも喜ばしく。買い足しちゃった缶トリハイが余計で、しばしうとうと…の昼下がり、少々焼けました。

そんな呑み直しの夜。蒸し暑く気持ちいいソウル・ジャズをお届けいたしましょう。ラスティ・ブライアントさんの1969年『NIGHT TRAIN NOW!』からB1の「Night Train」を。ラスティ・ブライアントさんは60〜70年代のソウル・ジャズ界、有象無象のテナー吹きの中では大ベテラン。1950年代にはホンカーとしてR&B界で活躍しておりました。大衆芸能叩き上げ。の割にはしっかりとしたテクニックも持っております。なんといってもぶっとい音色、正確で力強いアタック、そしてふてぶてしい面構えが魅力であります。

この「Night Train」。ジミー・フォレストさん有名なオリジナルは、ねっとりとした闇の中をゆっくりと重たく進む蒸気機関車、のようなブリッと黒いリズム&ブルースですが、こちらは遠くに見える街の灯を横目に快調に突っ走る阿房寝台特急という感じでしょうか。ラスティさんの力強いブロウっぷりがまるでカシオペアのように突っ走ります(乗ったことないけど…)。強力に後からプッシュするのはバーナード・パーディさんのドラムにブーガルー・ジョー・ジョーンズさんのギター。寝苦しさも吹っ飛ぶ快演であります!


明日の予報は残念ながら雨。でも気温が下がるのは少しほっとするような…。今晩呑んで、明日は仕事!だ。
 
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2011年02月07日

If I Should Lose You / Grant Green

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本日スーパーボウル・マンディ(日本では)にて、恒例にて半ば無理やり休みを取って朝からがっつりテレビ観戦。古豪同士、どちらも好きなチームの頂上決戦でどちらを応援しようかと迷いましたが、こういうときは判官びいきの日本人、単純に白熱したゲームを…との思いもあって、負けてる方に肩入れ。でもそのまま負けちゃいました。最後まで目の離せない面白いゲームだったけど、個人的には鉄のカーテン、特に守備的MVPポラマル選手が不発だったのが心残りです。

そもまま勢いで仕事もせずにふらふらしちゃった月曜日。だめだめなことに早い時間からカティサークでハイボールなど作っちゃったりして、LP引っぱり出して聴いているのはミスター・グルーヴィー・ギター、グラント・グリーンさん。氷は我が家の冷凍庫製じゃなくて、高級ロックアイス(!)ですよ。

グラント・グリーンさんは80年代後半くらいから、突然「踊れるジャズ」の流れの中で旗手にまつりあげられ、すっかり使い古され搾り取られちゃったような気がします。僕も一時は熱心に聴いていましたが、正直なところ今ではLP手に取ることもあまりなくなっていました。でも久しぶりに聴くとやっぱりいいなぁと思う如月7日なのです。音です音。この人はね、トーンです。いつも大体おんなじといえばおんなじなんだけど、アルフレッド・ライオンさんがしつこくしつこく使い続けただけのことはある。と思う。権藤権藤雨権藤、雨雨権藤雨権藤。

1985年に発売された『BORN TO BE BLUE』。1962年録音の未発表ものです。なのでジャケットはらしくないトホホなものですが、中身はしっかりブルー・ノート製。職人技を聴かせるソニー・クラークさんやアイク・ケベックさんとの相性もばっちりの好アルバムです。その中から大好きな「If I Should Lose You」を。ハンク・モブレーさんの『SOUL STATION』ものが有名なのかしらん。切ないメロディのスタンダードです。モブレーさんのもまぁなかなかいいなと思うのですが、このグラント・グリーンさんのバージョンのテーマの後、ソロに入るブレイクの2小節には全くやられちゃったのであります。はるか昔の学生の頃のお話。


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2010年11月27日

I Got Rhythm / Arnett Cobb

arnett_cobb_funky_butt.jpg

秋というのは春や夏や冬と違ってひたすら深まっていきます。今日は身近なところ、殿ヶ谷戸庭園で紅葉狩り。きれいでした。周りを見回せば高齢者率極めて高し。居酒屋で独り呑んだり、低い山歩いたり、爺さんみたいなことばっかりして、僕が実際じじいになったらいったい何をすりゃいいんだろう、とふと思う。

「I Got Rhythm」。1930年にガーシュイン兄弟がミュージカル『ガール・クレイジー』のために書いた曲です。単純なメロディで単純な構成の曲だけど、結構人気のあるスタンダード。テディ・バンさんの職人ギターとレオ・ワトソンさんの高速スキャットを擁したスピリッツ・オブ・リズムの皆さんをはじめ、ジャンプ/ジャイヴ系の方々も好んで取り上げているナンバーで、検索してみたら僕のiTunesには20曲近くのいろいろなヴァージョンが入っていました。

上掲のジャケットは、以前にも何度も紹介している僕の最も敬愛するテナー吹き、アーネット・コブさんの1980年録音『FUNKY BUTT』。B面の一発目で威勢よく演奏されるのがこの「I Got Rhythm」です。闘病生活による長いブランクから復帰2作目のアルバムですが、テキサス・テナーの面目躍如の豪快な吹きっぷり。ヴァージョンは違いますが下の映像の86年のセッションでもその豪放磊落な吹きっぱなしテナーが聴けます。足も腰もボロボロだけど、椅子に座らず松葉杖で吹く!というのがいいじゃないですか。


増え続けるYouTube映像ですが、アーネット・コブさんの映像はいまだに貴重。上掲の『FUNKY BUTT』も未CD化のままほったらかしだし、没後20年以上を過ぎ、人の記憶からもだんだんと消えてっちまうのかなぁ…と思うと何とも切ないです。この偉大なるテナー・サックス・プレイヤーにもう一度光を!
 
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