ジョー・ザヴィヌルさんはオーストリアは音楽の都、ウィーン音楽院の出身、だそうです。なにもわざわざアメリカまで行ってヤクザなジャズやフュージョンなんかに手を染めなくても、と思うけど、そこはまぁ人の勝手ですね。60年代のキャノンボール・アダレイのバンドで腕を磨き、1970年にウェイン・ショーターと組んだウェザー・リポートで一躍有名になりますが、70年代以降は僕は殆ど興味がありません。でもこの「Mercy, Mercy, Mercy」を作った、ということだけで忘れられないアーティストであります。
「Mercy, Mercy」だとドン・コヴェイ、「Mercy Mercy Me」だとマーヴィン・ゲイ、「Mercy, Mercy, Mercy」と3つ並んでようやくキャノンボール・アダレイ・クインテットの登場ですね。1966年の同名のライブ盤からのヒット曲。ゴスペル臭のぷんぷん漂う、ゆったりとしたスロー・ファンクです。ヨーロッパ生まれの白人が作ったとはとても思えない黒々としたグルーヴ。この曲ではザヴィヌルはエレピを弾いてますが、これもまたアーシーですね。ボビー・ティモンズよりも黒いかも。こうした感覚も後天的に身につけられるもんなんだなぁ、がんばらなくちゃ、と思う。
さて、バンドのリーダーはジュリアン・キャノンボール・アダレイさん。作曲者に敬意を表してこの曲ではソロはありませんが、まことに大らかによく歌うアルト・サックス吹きです。歯切れのいい符割りと温かくて深みのある音色。下手なテナー奏者よりもぶっとい音にしびれます。弟のナット・アダレイと組んだクインテットでは、この曲の他、「This Here」や「Work Song」といった黒々としたヒットを飛ばし、その体型ともあいまって「ファンキー大王」といったイメージ。マイルスのとこにもしばらくいたし、ビル・エヴァンスと共演したりと、幅広く正統派な活動もしてるんですけどね。
「Mercy, Mercy Mercy」は名曲だけにカヴァーも多数。お気に入りはメイシオ・パーカーさんがリバース・ブラス・バンドの皆さんと共演したバージョン。『SOUTHERN EXPOSURE』収録。今週の土曜、メイシオ聴きに行ってきます。
