2010年02月01日

Robbin's Nest / Illinois Jacquet

illinois jacquet go power.jpg

テキサス・バーガーなるものが巷じゃ話題だそうですが、長年のアルコールに疲れきった我が胃袋はまったく興味がわかないみたいです。少食系中年男子。鯨飲兎食。こんなことで歳を感じたりします。でも耳の方はこってり系でもギトギト系でも、まだまだいくらでもいけるんですけどね。今宵の一献の肴は、カロリー高めのテキサス・テナー代表、イリノイ・ジャケーさん。

「テキサス・テナー」というのは、ブロウやスクリームを多用するブルージィでタフなテキサス州出身の荒くれテナー吹きの面々のこと。ハーシャル・エヴァンスさんアーネット・コブさんにバディ・テイトさんにデヴィッド・ニューマンさんキング・カーティスさんなんかも。なにも出身地でプレイ・スタイルが決まっちゃうワケじゃなくて、もっと「知的な」テナーを吹く方ももちろんいらっしゃいますが、まぁたまたま二大巨頭であるイリノイ・ジャケーさんとアーネット・コブさんが揃ってたからのネーミングじゃないかと思います。

さて、イリノイ・ジャケーさん。地元ミルト・ラーキン楽団を経て雇われたのが名門ライオネル・ハンプトン楽団でした。その大ヒット曲「Flying Home」のテナー・ソロでジャケーさんが「ヴォー!」とブロウしたことからホンカーの歴史は始まりました。と、ものの本にあります。今聴くと随分おとなしいもんですが、1942年には当時の若者どもを興奮のるつぼに叩き込んだらしい。で、同じくハンプトン楽団でジャケーさんの後釜に座った同郷のお仲間、我が愛するアーネット・コブさんによる「Flying Home No.2」での本格的グロウルが火に油をたっぷりと注ぎ、以降は雨後のタケノコ状態に。吹き人知らずのめくるめくホンカーの時代が到来します。

しかしジャケーさんは本来は正統ジャズの人。たしかにイクときゃイッちゃいますが、バラッド吹かせりゃ美しくよく歌うし、テクニックだってしっかりしてます。決してブロウだけの人じゃないんだけど、JATP(「Jazz at the Philharmonic」というノーマン・グランツ主催のオール・スター興行ね)でフリップ・フィリップスと繰り広げたテナー・バトルでのえげつないブロウにより、ジャケー株は大暴落。夜毎のクラブじゃ当たり前のように演られてたことだろうけど、名士居並ぶ大会場で悪ノリし、レコードにまで残されちゃったがために、おジャズ評論家のセンセイ方からは目の敵のようにけなされるようになりました。まぁ、いい傾向だと思います。

トップに貼ったジャケットのアルバム『GO POWER!』は評論家センセイ眉ひそめるコテコテ名盤。ハンプトン楽団で同僚だったオルガンのミルト・バックナーさんに、ドラムのアラン・ドーソンさんを引き連れたトリオ編成ライブでの大噴火が聴けます。「Flying Home」の改作再演である「Illinois Jacquet Flies Again」と、阿鼻叫喚の「Watermelon Man」に挟まれて、ひっそりと収められた名曲「Robbin's Nest」を。当日のハコの雰囲気に押されてか、いつもよりちょいとオーバー・ブロウ気味ですが(そこがまたいいんだけど)、地に足着けてしっかりと歌ってる男臭い名演。ミルト・バックナーさんの愛嬌のあるオルガンもなかなかです。

村上春樹氏の『国境の南、太陽の西』という小説で、主人公が経営するバーの店名にも使われたのがこの「ロビンズ・ネスト」。イリノイ・ジャケーさんにより書かれたものだとは知らない人が多いと思います。実は僕もスタンダードか何かだと思ってました。さりげないけど実は複雑なコード進行、美しくもダンディなメロディ。単なるホンカーには書けません。このライブ盤じゃないけど曲だけならこちら。

コテコテジャズのファンの方なら「わしゃあ、イリノイじゃけぇ!」と菅原文太風広島弁で口走ったことが一度はあるはず。広島出身でもイリノイ出身でもないテキサス・テナーのイリノイ・ジャケーさん。実は厳密にいうとテキサス生まれでもありません。ルイジアナ州生まれのテキサス州ヒューストン育ち。ややこしいですが、ほぼ「テキサス・テナー」ってことで。

ちなみに菅原文太さんは宮城県仙台市のご出身だそうです。
 
posted by ac at 22:12| Comment(0) | TrackBack(0) | jazz | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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