2013年01月26日

My Way / Gene Ammons

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昔々、サックスを吹き始めた頃、先輩から「タンギングは羊羹のようにやれ!」と教わりました。つまり羊羹に包丁を入れるように、音は隅から隅までしっかり出したまま、タンギングの瞬間だけをスパッと切るのだ、という意味ですが、僕はこれを音の質の話と勝手に解釈しました。すなわち「音は隅から隅までしっかり詰めて、黒く・ぶっとく・重く出すもんだ」と。そのとらやの羊羹おもかげのようなブリッと黒い音の最高峰が、ジミー・フォレストさんと「ボス・テナー」ことジーン・アモンズさん。ウン十年も吹いていても自分ではなかなか理想の音は出せませんが、この人たちの音は聴くたび本当にほれぼれします。

49歳で早逝したアモンズさんには晩年にあたる1971年のアルバム『MY WAY』から同名曲を。そう、あの「マイ・ウェイ」です。結婚式などでちょっと歌自慢の新郎のおじさんかなんかに朗々と歌い上げられちゃったりすると本当にげんなりしちゃう曲ですが、実はよくできた曲だと思います。アレサの未発表集に収められたバージョンを聴いて初めて僕も気づきました。そしてこのボスのバージョン。最初にアルバム買ったとき(学生時代だったかなぁ)には「げっ!ムード・テナーじゃん!」と思った覚えがありますが、まぁケツが青かったのです。今じゃ「ムード・テナー結構じゃないの」と思える歳(!)に僕もなりました。もちろんアモンズさんが単なるムード・テナーで終わるワケはなく、曲の後半では汗とつばきが飛び散るようなブロウを存分に聴かせてくれるのですが。決して聴き手に寄り添わない、男気溢れる「My Way」です。


学生時代からバイブルのように読み倒して、今じゃボロボロになった「ジャズ批評48号・特集テナー・サックス」(1984年刊)というのが本棚にあります。このメインの記事が40数名のテナー吹きを「主要テナー奏者のワン・ポイント・ディグ!」として紹介したものですが、この中にジーン・アモンズさんがいません。チャーリー・ラウズさんやラッキー・トンプソンさんまで入っているのに、ふざけんじゃねぇよ、と思いました。黒姫山が載っているのに北の湖が載っていないようなもんです。ま、30年前の日本の「おジャズ」評論家の耳はそんなもんだったのかもしれません。エンパイア・ステイト・ビルディングのようにでっかくてよく歌う、と喩えられたアモンズさん。僕にとっては永遠の「ボス・テナー」なのです。
 
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2013年01月24日

Encontros E Despedidas / Maria Rita

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マリア・ヒタさん。何度かここにも書いているブラジルの国民的大歌手、エリス・レジーナさんの娘です。父親はピアニストで作曲家のセザール・カマルゴ・マリアーノさん。カエルの子はカエルでした。

2003年、24歳でのデビュー・アルバム『MARIA RITA』より「Encontros E Despedidas」を。「出会いと別れ」という意味だそうです。ミルトン・ナシメントさんの名曲のカバー、彼の曲はエリスも多数歌っていました。途中「ヘレレレーレレーエーレーエー」と歌うところ(↓1分50秒過ぎ)は、エリスの生き写しっぷりに、何度聴いても鳥肌が立つのです。


到着した列車は旅立つ列車でもあるのです。春まだ遠き暖かな夜。
 
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2013年01月19日

East St. Louis Toodle-Oo / Duke Ellington & His Orchestra

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かなり古い曲を一曲。1927年といえば昭和2年、今は亡きうちの親父の生まれた年です。偉大なるピアニストにしてコンポーザーにしてアレンジャーにしてバンド・リーダーだったデューク・エリントンさんですが、このころは偉大でも何でもなかったわけです。20世紀の巨匠への道の第一歩はこの曲から。1940年代に「Take The A Train(A列車で行こう)」が生まれるまでエリントン楽団のテーマとなっていた曲「East St. Louis Toodle-Oo」。名曲だと思います。

ピアニストではありますが「バンドが私の楽器」と語っていたエリントンさん。メンバーそれぞれの個性を知り尽くしたうえでの作編曲。この曲も偉大なるトランぺッター(このころは偉大でも何でもなかったわけですが…)バッバー・マイレーさんがいなければ生まれなかった曲でしょう。おどろおどろしいイントロに切り込んでくるのは、マイレーさんの強力なプランジャー・ミュート。途中からメジャーに展開してソロを引き継ぐのはトロンボーンのトリッキー・サム・ナントンさん。そしてリズムを支えるのはフレッド・ガイさんのガチャっと刻むバンジョー。まだジョニー・ホッジスさんもバーニー・ビガードさんもハリー・カーネイさん(加入直前?)もいない頃ながら、個性には既に事欠きませんでした。


この録音ののち、1927年12月にデューク・エリントンさんはバンドを引き連れてニューヨークはハーレムにある白人専用高級クラブ「コットン・クラブ」に進出し、専属楽団として快進撃を始めます。武器はバッバー・マイレーさんのラッパを中心とする「ジャングル・サウンド」。後にアル中でバンドをクビになるマイレーさんですが、そのエッセンスは後任のさらに偉大なる(ばっかだな)トランぺッター、クーティ・ウィリアムスさんに引き継がれていきました。

映画『THE COTTON CLUB』が公開されたのはまだ僕がまだ高校生の頃でした。エリントン楽団が出演していた頃の同クラブを舞台にした映画で、監督はフランシス・コッポラ(あ、500円でDVD売ってる。買おうかな…)。何だかまったくわかっていないながら「ジャズ」というものに大きな妄想を描き始めていたころ、勇んで観に行ったし、サントラのアルバム(LPね)まで買いました。でもね、まだケツが青かったんだな。今聴くと素晴らしいそのアルバムは、10年ほどレコード棚に眠っていたのです。
 
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2013年01月07日

They Can’t See Your Good Side / Syl Johnson

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1月7日はシル・ジョンソンの日。誰が決めた? 僕が今日決めました。

なんだか何もやる気が起こらずに、半日かけて家にあるシル・ジョンソンさんの全アルバムをぼんやりと聴きとおしてみたのです。探してみたらCD6枚LP3枚。内容はダブります(米NUMEROの狂気のリイシュー、CD4枚+LP6枚の究極のボックスセットは残念ながら持っていません)。シカゴ・ソウルにハイ・サウンドのサザン・ソウル、さらにファンクありブルースありの全くとっ散らかった個性。面白いと思えばなんでもやっちゃう節操のなさで聴き飽きません。

ファンキー・ソウルやブルース・ナンバーの合間、たまにものすごいバラッドがでてきて、そのたびにソファに崩れ落ちたのです。以前にも書いた「Could I Be Falling In Love」然り。ヤクザなオヤジが歌う切なさあふれるメロディ。決して寄り添わず、突き放すように歌う、甘さも水気も絞り落とした枯れきったバラッドがもう何曲か。ヤクザなオヤジだからこそ沁みるのです。切なさとはオヤジの胸の奥にある少年のココロなのです。

ハイレグのお姐ちゃんのエロジャケが時代を感じさせる82年の『MS. FINE BROWN FRAME』。ジェイムス・コットン・バンドも参加したとびきり散漫な印象のアルバム(時代も悪いね)ですが、ここにも一曲仕込んでありました。「They Can’t See Your Good Side」。「男」を感じさせるバラッド、滅茶苦茶いい曲だなぁと聴いていたら、それもそのはず、ジョージ・ジャクソンさんのペンでした。13年後のアルバム『BRIDGE TO A LEGACY』にも再収録してるくらいだから、きっと本人もお気に入りなんだと思います。


何となく歌詞を打ってみたので載せてみたりして。

They say when you’re a little upset
And they hear you say things that later on you regret
And Watch you clown when you’ve had too much to drink, too
But they don’t be around after that alcohol wear off of you
They don’t see your good side like real lover
When you apologize for what you say and what you done wrong
They don’t see your good side

They see you when you’re out on the town
Then they immediately assume that you’re out there playin’ around
And don’t run across an old “used-to-be”
Then they start thinkin’ that you’re really misusin’ me
They don’t see your good side that the feelin’ is strong
No matter who you see you won’t do me wrong
They can’t see your good side

They see you gamblin’ and they think they should worry
About the money you lose, but I know better yes I do, yes I do, yes I do
And if you’re workin’ late and don’t call home
I don’t worry ‘cause I know you got a good thing goin’ on
They can’t see your good side no matter what you do
You’re gonna always always be true
They can’t see your good side

They can’t see your good side
They can’t see your good side
They can’t see your good side
They can’t see your good side


今日、我が尊敬する先輩である静岡の友人から酒とつまみが届きました。静岡の名酒「開運 無濾過純米」を「呑んでみたいねぇ」とふとつぶやいたら、あちこち走り回って探して送ってくれたのです。涙が出る。冷やでいただくよ。
 
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2013年01月04日

Harry Hippie / Bobby Womack

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遅ればせながら新年あけましておめでとうございます。平成25年って、あれからもう四半世紀も経っちゃったのか、と少し遠い目をしつつ、今年こそよい年にしたいなぁと思う1月4日金曜日なのです。

そんな思いもはかなく、入ってきたのはあまりよくないニュースでした。昨年2月に17年ぶりの来日を果たし、6月には新譜も出してくれたボビー・ウーマックさんが、英BBCの番組で自分がアルツハイマーを患っていることを告白したそうです。まだごく初期の段階だそうですが、曲や人の名前を思い出せなくなっているのだとか。ミック・ジャガーよりも若いまだ68歳。全く残念なことです。

18年前の素晴らしいステージを覚えているだけに、杖をついて現れた昨年の来日公演は、確かに観ていて辛いところもありました。でも弱った身体から絞り出す渾身の歌声は「ラスト・ソウルマン」の名前に恥じぬもの。泣きながら、手を振りながら一緒に歌った「Harry Hippie」の印象深い「シャ〜ララ〜ラ」のメロディは、一生僕の頭の中を回り続けるはずです。


より熱いライブ映像はこちらで

1972年の『UNDERSTANDING』の最後にひっそりと収められていた「Harry Hippie」。ファンク/ロック色の強くなってきた頃のアルバムにあって、サム・クックさんをしっかりと感じさせてくれる曲でした。当時ヒッピー生活を送っていたボビーの弟、ハリー・ウーマックを題材にしたナンバーです。この曲がヒットした1年後、ハリーは恋人に殺されてしまったのだとか。以来、ボビーはステージでは弟に捧げて歌っていたそうです。

時にガサツとまで言われる歌声は決して最高のものとは思いませんが、そのギター・プレイやソング・ライトの才能まで含めて、本当に「ラスト・ソウルマン」だったと思います。回復が難しい病気とは聞きますが、不屈の魂でまた僕らの前に立ち上がって欲しいと思うのです。


人の名前を思い出せないといえば、僕も最近全く同じ症状があります。きっとアル中ハイマーでしょう(ま、オヤジですから…)。いい加減少しはセーブしなければいけないのか?と自らに問う、新たな年の初めなのです。
 
posted by ac at 20:57| Comment(2) | TrackBack(0) | soul | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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