2009年06月29日

When Hearts Grow Cold / Candi Staton

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梅雨もペナントレースも中休み。ついでに僕も仕事が休みで絶好の「俺のベンチ」日和でした。平日の午前中からベンチで寝転び缶ビール片手にTシャツ脱いで音楽聴いてるいい歳のおやじ。犬の散歩のご婦人などからかなり冷たい視線を浴びせられますけどね、至福の時です。気にしない気にしない。

聴いていたのはキャンディ・ステイトンさん。今月号のブルース・アンド・ソウル・レコーズでアルバム完全ガイドなんてなものをやってたもので、読んでたら火がついちゃったみたい。濃密な2時間でした。

その昔、1971年フェイム録音の『STAND BY YOUR MAN』は絶対だと思っていました。鈴木センセイもそう言ってたしね。声の伸びがあるわけじゃない。レンジが広いわけでもない。ピッチだってイマイチだ。ルックスだって…(失礼)。でも聴いてる心にぐっと響いちゃうのは、いかにも実直そうな南部の小娘、というイメージからでしょうか。さすがはリック・ホールの秘蔵っ子、地元アラバマ、フェイム録音はバックのよさも手伝って名曲多数です。今じゃリイシューCDでそのほとんどは聴けます。学生のころは血まなこで中古屋まわってましたけどね(ヒマだっただけかも)、ま、どちらもいい時代です。

ブルース・アンド・ソウル・レコーズの特集見てて驚いたのは、そのフェイムを離れてからの録音。70年代中ごろまでのアルバムはいきおいで買いましたが、正直言って内容は「うーん…」。その後は全くフォローしてませんでしたが、そのアルバム数の多いこと。1983年のゴスペル転向後も含めて2002年までほぼコンスタントに1〜2年のインターバルでアルバムをリリース。売上枚数こそぜんぜん違うと思うけど、サザンかユーミンか…というリリースのペースです。ゴスペル・アルバムってのはあまり利益にこだわらなくていいのかなぁ。

今宵の一献は「When Hearts Grow Cold」。「心が冷たくなっちまったらおしまいさ」って、ボビー“ブルー”ブランドさんやオーティス・クレイさんも歌ってる名バラッドです。2006年に20数年ぶりに世俗音楽に復帰したアルバム『HIS HANDS』から。もうばりばりに70年ころのフェイム録音を意識したカントリー&ソウルなバックに、針を落とした瞬間に涙が出ました(CDには針は落とさねぇか…)。そして健在なのがキャンディの「南部の小娘」ぶり。相変わらずの素人っぽい歌いっぷりですが、説得力は抜群。今年も同じ路線のアルバム出してますが、この曲ほどのインパクトはなかったなぁ。静止画だけどこの曲のYouTubeはこちら。掌の脇のシワがさぁ、年輪だよね。かっこいい。

さてここで宣伝。うちのジャンプ・ブルース・バンドのライブは今週土曜日、いつもの渋谷のお店です。お暇と興味のおありの方は是非。
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2009年06月23日

Down On Bourbon Street / Sam Butera & The Wildest

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ちょっと古い話ですが…エイメン。6月3日にサム・ブテラ(バテラ)さんが亡くなりました、というのはOkehさんのブログで知りました(情報ありがとうございます)。というか正直言うとご存命だったことも知らなかったのですが(汗)。最も偉大な白人ホンカー(って分母が少なすぎ)にして、ルイ・プリマさんのバンドの大番頭でした。

ぶっとい眉毛がすてきなジャケットに惹かれて買った上記のアルバムはサム・ブテラ・アンド・ザ・ワイルデスト名義の『On Stage』。ぶっとい音色のテナー・サックスはもちろんのこと、素晴らしい歌声も全編で聴けるエンターテイナーっぷり全開のアルバムです。「Just A Gigolo 〜 I Ain't Got Nobody」ははっきり言って本家のルイ・プリマさんよりいいかも。

イタリア系白人のルイ・プリマさんを支えたサム・ブテラさんはニューオーリンズ出身。これまでの記事をお読みいただいている方はご存知のとおり、逆人種差別的傾向のある僕ですが、かの地に限っては肌の色はまったく気になりません。ニューオーリンズ色丸出しの「Down On Bourbon Street」で陽気に献杯。

サム・ブテラさんは1959年に『The Big Horn』という一応ジャズのフォーマットのアルバムを出してます。これを寺島靖○さんが『ホーンならコレを聴け』などというエラそうなタイトルのシリーズで再発してるのですが、解説の「このユーモラスを解さずにジャズの愉しさが味わえるのか」というクダリにはもちろん同感するものの、その解説にはルイ・プリマのルの字も出てこない。「ルイ・プリマを解さずにサム・ブテラを語れるのか」と言いたいね。
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2009年06月18日

Red Light / Johnny Alston & His Orchestra

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道ばたで綺麗な石ころ拾ったような気分。ジョニー・アルストンさん。といっても殆どの方は「誰よ、それ」だと思います。僕もついこないだまでそうでした。西海岸のテナー吹き兼バンド・リーダー、だったようですが、黒人大衆音楽史には殆ど足跡すら残していません。

40年代後半〜50年代初頭のモダン/RPMレーベルに残された名も無きアーティストによる名も無きナンバーを、これでもか!とばかりにぶちこんだエイス・レコードによるジャンプ愛あふれるナイスなお仕事、『MELLOW CATS 'N' KITTENS』シリーズ。『MORE…』『EVEN MORE…』『YET MORE…』と…『パイプのけむり』かのごとく4枚が出されてます。無名ながらも甘美で陽気な猫ちゃん子猫ちゃん大集合。ずば抜けた作品こそさすがにありませんが「こんなもんがこんなにいっぱい残ってたんだ…」とびっくりしちゃう佳曲揃いです。今のところのシリーズ最終作になってる『YET MORE…』で、妙に心がとらわれちゃったのが、ジョニー・アルストンさんのバンドによるこの曲「Red Light」。「1・2、3・4、5・6・7・8、9・10、レッドラーイト」て妙な掛け声のなんてことはないジャンプ・ナンバー。どうやら子どもの遊び唄がモチーフみたいです。でもデュエットで歌う女性歌手の方の、ちょっとハスキーで投げやりな歌いっぷりにやられちゃいました。

その素敵な女子投げやりはジーン・デメッツ(Jeanne DeMetz)さんとかいう人。正体不明。というかリーダーのジョニー・アルストンさんからして正体不明。なので早速リサーチ開始。

調べてみると(っても情報が極端に少ないワケですが…)ジョニー・アルストンさんのバンドは、若き日のワイノニーのアポロ・レコードの4回のセッションのうちの1回のバックを担当してました。他のセッションはイリノイ・ジャケーのバンドに、ジャック・マクヴィのバンドに、オスカー・ペティフォードのバンドと大物揃いの中、唯一の小者(失礼!)。ワイノニーがまだまだ硬派だったころの直球ブルース・セッションで、まずまずの手堅い守備。これを足がかりにしたかどうかは知りませんが、その後、1945年から46年にかけて自己名義の2回のセッションで10曲を録音し、モダンから3枚、アトラスから2枚のシングルをリリースした、らしい。合計5枚のシングル。で舞台から静かに立ち去る。その後のことは検索不能です。

で、調べてみたら(っても情報が極端に少ないワケですが)、スペインの超マニアックな復刻レーベル、ブルー・ムーンからその貴重(かどうかはわかりませんが)な録音9曲を収めたCD『Juke Box R&B 1945-1946』なるものが出てました。他に収録された3組のアーティストも全員「あんた誰?」な「いったい誰が買うんだろうCD」ですが、僕が買っちゃいました。なんだか売る方も買う方も採算度外な感じで。

「Red Light」を凌ぐナンバーこそなかったけど、どれも悪くないデキです。でもヒットとは無縁でした。でもどれも悪くないデキです。歴史の波間に静かに消えていった幸薄き職人。こういうものをリイシューしてくれる愛あるレーベルに感謝をしつつ、こんなんばっか買ってもられません。ふぅ…。
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2009年06月05日

Ain't Nothing Like The Real Thing / Marvin Gaye & Tammi Terrell

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「一番好きなソウル・シンガーは?」というソウル有識者アンケートをとったら、マーヴィン・ゲイさんは1番か2番か…、いずれにせよ上位につけることは間違いないと思います。と思いますけどね、恥を忍んで申し上げれば僕にはマーヴィンの良さがよくわかりません。知り合いには「マーヴィンだったらチ○ポしゃぶってもいい」とまでいう崇拝者(男、どんな例えだ…)もいますが、僕にとっては「特別のシンガー」という思いがないのです残念ながら。もちろん並のシンガーとは思いませんけどね、サム・クックにしてもJBにしてもオーティスにしても、スティーヴィーにしてもだ、僕にはある日何かの曲に衝撃を受けて、熱病にかかったように一人のアーティストばかり聴いていた時期がそれぞれあったんですが、マーヴィンにはそういうことが全くなかったなぁ。「Stubborn Kind of Fellow」は大好きだし「Mercy Mercy Me」も「Let's Get It On」も「Sexual Healing」もいい曲だなぁって思うけど、いい曲だったら無名のアーティストにだっていっぱいある、というのはこの駄ブログに書いてきたとおりです。

歌は上手い、ルックスもいい、センスもあるし、母性本能くすぐるナイーブさも持ってる。高邁なメッセージと個人的な煩悩との間を揺れ動いたある種ジョン・レノン的な危ういカリスマ性の持ち主。って頭では並べられるんだけど、なんかこう、ほら、もう斜めに見ちゃってる。素直にのめりこまないのです。何なんだろこの感覚。単なる南>北志向のせいなのか、あるいは「What's Going On」があまりに神格視されてることへのささやかな反発かしらん。あまりマジメに分析すると僕の性格上の問題点があらわになっちゃうような気もするので、ここではこの辺にして。

でも、そんな僕のココロにも素直にまっすぐ入ってくるのはタミー・テレルさんとの一連のデュエット作品群。変なリキみもつっぱった感じもない、等身大のマーヴィンが聴けます。でもって華奢なイメージながら、全身全霊で歌うタミー・テレルさん。史上最高のデュエットです。世界最強タッグ。上掲のアルバム『THE COMPLETE DUETS』はマーヴィン&タミーが残した3枚のアルバム全てに未発表曲とタミーのソロ録音を加えたCD2枚組。2001年に出た素晴らしい企画であります。

いい曲いっぱいありますが、完全無欠の「Ain't No Mountain High Enough」(1967年)と並ぶ名曲「Ain't Nothing Like The Real thing」(1968年)を。いずれもアシュフォード&シンプソンのペンによるもので僕は勝手に「Ain't 2部作」と呼んでます。「Ain't No Mountain …」の「愛の嵐」みたいな激情っぷりに比べ、「Ain't Nothing …」の方は小さくとも力強く灯る炎のような。「写真じゃダメなの、本物のあなたじゃなきゃ」「手紙じゃダメなんだ、本物の君じゃなきゃ」(若いよね…)と歌詞はベタベタの甘口ラブ・ソング。でも何だか切なさを感じちゃうメロディ。ストリングスばりばりの上にフルートが乗っかった、ちっともソウルっぽくないアレンジだけど、上記コンプリート集に収められた未完成の別テイクを聴いてみると、このアレンジも欠かせないことがよくわかります。そして確信に満ちた2人の歌いっぷり。私生活では別々の伴侶を持っていた2人ですが、ここでは本気になっちゃってる気がする。本気と書いてマジ(笑)。最後のタミーの「talk to me!」にやられちまう、わずか2分13秒とは思えない濃密な愛の世界。

この2人のデュエットがいつまでも美しいのは、やっぱりタミーがわずか24歳にして脳腫瘍により夭逝してしまったからでしょうか。こんなこと言っちゃいけないけど「モータウン××周年ライブ」かなんかで、いい年喰った2人のデュエット見たらかなり興醒めになる気がします。



posted by ac at 00:20| Comment(0) | TrackBack(0) | soul | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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