2009年03月22日

Flyin' Home / Arnett Cobb

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いつの間にか今年度もあと10日ほど。桜は咲いたし、開幕間近だし、WBCも仕事も大詰めでなんだか気分が慌し。そんな中、あさって3月24日は敬愛してやまないアーネット・コブさんの20回目の命日であります。もう20年も経っちまったか、としみじみ思うとともに、奇跡的にこの目で観られた亡くなるちょっと前の来日公演を、ついこのあいだのことのように思い出したりもます。そんだけ印象が強かったってことか。そのお陰で僕はいまだに細々ながらテナーを吹き続けています。

いわゆるホンカー的な、ノリ一発でグォーっといっちゃうタイプはもちろん好きですが、それだけだったらコブさんにこんなにメロメロにはなりません。ハル・シンガーでもレッド・プライソックでもいいってワケじゃねぇんだ。彼のテナーにはユーモアと温かみと枯れた味わいがたっぷり詰まってます。グォーっといくときゃいっちゃうけど、抑えるところは抑えるし、彼の不遇な人生を映し出したかのような奥行き深いブロウ。一般的な評価は低いみたいだけど、そんなこたぁどうでもいいんです。いやむしろ低くていいんだ。僕にはちゃんとわかってるから。

この「Flying Home」はライオネル・ハンプトン楽団入団時に、前任のイリノイ・ジャケーさんから申し送りを受けて以降、彼の生涯の十八番となった定番曲。何度も何度も録音してますが、コブさんのバックを務めるには最良のギター(タイニー・グライムスさん!)とピアノ(ロイド・グレンさん!)が参加した1974年のパリでのライブから。全員がミスター・エンターテイメントの麗しきメンバー。嬉しくなっちゃうフレーズが随所で聴かれます。この曲では残念ながらピアノ・ソロはなく、タイニーのギターもいつもの素晴らしいフレーズのキレがちょっと足りない気もしますが、御大は絶好調。手馴れた曲なこともあって余裕のブロウで観客を煽る煽る。最後は豪快にがぶり寄りで、松葉杖ついてる人の演奏とはとても思えません。あのフレーズもこのフレーズも惜しみなく全部叩き込みました、っちゅう楽しくなっちゃう一曲です。

没後20年を記念して、知られざる未発表作など出ないかなぁ、などと心ひそかに期待してたりしたんですが、誰も気づいてもいないみたい。何度も聴いたレコードを今宵もかけて独り献杯する春の夜。外は雨だよ。
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2009年03月16日

Move Over / Soul Children

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ジャニスのあの曲ではありません。72年『GENESIS』の「Don't Take My Sunshine」も、74年『FRICTION』の「I'll Be The Other Woman」も、そして76年『FINDERS KEEPERS』の「If You Move I'll Fall」もいずれ劣らぬ大傑作だけど、初々しいデビュー盤、1969年の『SOUL CHILDREN』から「Move Over」を。

上記のみならず傑作数多いソウル・チルドレンの皆さん。メンフィスはスタックスが生んだ男声2名女声2名(女声はそのうち1名になりますが)からなるグループです。いわゆるコーラス・グループっていうと、メイン・ボーカルがいて、それを引き立てるためのバック・コーラスがいるっていう、ハロルド・メルヴィン&ザ・ブルー・ノーツというか内山田洋とクール・ファイブのパターンが主流ですが、ソウル・チルドレンの皆さんはちょっと違う。メンバー全員歌えちゃうので、綺麗なコーラスでリードの引き立て役にまわろうなんて気はさらさらなくて、自分の出番が来るのをキバを研いで待ってるような。ソロ・シンガー4人がたまたま一緒に録音したみたいな感じですが、これはまたこれでいいんだなぁ。

女声2人は良く似た声質のシェルブラ・ベネットさんとアニタ・ルイスさん(いずれも上手い!)。で、もって男声がノーマン・ウェストさんと後にJ.ブラックフットと変名するジョン・コルヴァートさん。いわゆる「甘い声」の対極にある鋭くてかすれてて媚びない声を「塩辛声」と言ったりするんですが、この2人とも抜群に塩辛い声。特にブラックフットはソウル界1、2を争う塩辛さです。これだけつまみに日本酒1升いけちゃいそう。

その塩辛シャウトが爆発しちゃうこの曲「Move Over」。かのサム&デイヴを育てたヘイズ=ポーターのペン&プロデュースの美しいミディアム・バラッド。でもリードをとる2人は全くメロディ意識してません。特にブラックフットの後半のタガが外れたシャウト。ほとんど叫んでるだけだ。音はこちらで

20年近く前(もういつだか覚えてない)にブラックフットがピンで横浜に来たときは、勝手に楽屋まで遊びに行きました。迷惑だっただろうなぁ。ごめんなさい。奇跡的にも昨年再結成されたソウル・チルドレンの皆さん。来て欲しい。
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2009年03月14日

Darling, Can't We Make A Date / The Cats & The Fiddle

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キャッツ・アンド・ザ・フィドルの皆さん。1939年から1950年までの12年間、スピリッツ・オブ・リズムの向こうを張ったジャイブ・コーラス・グループです。スピード感とアイディアあふれる初期の演奏や、タイニー在籍時の中期の演奏に比べて、女性ピアノ弾きなどを加えてポップな展開をはかろうとした、のかどうかは知りませんが、後期の演奏はあまり人気がありません。というかもともと人気なんかないか…。上掲CD(3枚ものシリーズの最終ね)も1枚目と比べると圧倒的に曲の歩留まり悪いし、確かに一時のシャープさは失われ、凡百のコーラス・グループに成り下がっちゃったような感じがします。

けどね、その後期録音。パッとしない曲の中に埋もれながらも(個人的には)燦然と輝くのが「Darling, Can't We Make A Date」。1947年、といえば日本国憲法が施行された年、のレコーディング。もぉね、こういう曲が3曲ほどあったら無人島でも暮らしていけます!っちゅうくらいの惚れ惚れしちゃう見事なメロディとコード展開。夢枕にも出てきました。オースティン・パウエルさんの作曲。この一曲だけでも偉人です。これでギター・ソロがタイニーだったらなぁ…、と思う。

どこからともなく沈丁花の香り。最近料理を作るのが好きになってきました。あじのなめろうで一献しつつ、年度末の夜は更けて…。



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2009年03月11日

In A Sentimental Mood / Sonny Rollins

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「ジャズ」と呼ぶのもはばかられる、匂い立つような泥臭いのばかりいつも聴いてる僕ですが、なんだかんだいっても一番上手いテナー吹きは、50年代雲隠れ前のソニー・ロリンズさんだと思います(まっとうだ)。完璧にコードを分解した上で、作曲してきたかのような見事なメロディに再構築しちゃう。すごいテクニックだと思うけどひけらかすような嫌味がない。おおらかだけど実は繊細。

ジャズはこのあと60年代から、テクニックのためのテクニックに、人のやらないことやるとリスペクトされるスノッブな音楽になっちゃうんだけど(実はあたしにはわからないだけだ…)、きちんとメロディを伝えていた愛すべきジャズの最高峰がロリンズ。だと思っています。『サキコロ』は完璧すぎてこんなブログには不釣合いなので、もうちょっと青いところ『SONNY ROLLINS with MJQ』から、大好きな一曲を。

「In A Sentimental Mood」。かのデューク・エリントンさんが1935年に書いた名曲です。その素晴らしいメロディを壊すことなく、凛々しく吹ききってるソニー・ロリンズさん。1953年のモダン・ジャズ・クァルテットとの録音。もうね、でっかい背中が目に浮かぶような「男」を感じる吹きっぷりなのです。好きじゃないコルトレーンもこの曲ばかりは良かったけど、それほど名曲ってことかしらん。めずらしくシングル・モルトなど開けながら、めずらしく「ちゃんとした」ジャズを聴く今宵。「On A Slow Boat To China」もいいね。



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2009年03月07日

I'd Rather Go Blind / Spencer Wiggins

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いつでも買えるようないわゆる名盤はなかなか買わないくせに、いかにも売れなそうなマイナーなアルバム見つけると即買っちゃう。アレサオーティスみたいに誰もがその実力を認めているアーティストよりも名前すらほとんど知らないような人に妙に心を動かされちゃう。いや自分の話。マニアのココロです。聴いてみて買わなきゃよかったと思うCDは数知れずなんですが、これがなかなか治りません。希少価値と純粋な音楽的価値とをごっちゃにしちゃってる。

でもなかにはこのスペンサー・ウィギンスさんみたいに、知名度と実力とが恐ろしく離れてる人もいるのでやめられないんだなぁ。とにかく1977年に初の編集LPが我が日本のヴィヴィッド・サウンドから出される(偉業だ!)までは、ごく一部のコアなシングル・コレクターだけのものだったんですから。しかしそのヴィヴィッドや今じゃ英ケントの尽力により、すっかり評価の確立した無名シンガー(?)になりました、スペンサー・ウィギンスさん。久しぶりにiPodに入ってる30数曲聴き直したら、どれもやたらと水準高いです。一般的にディープ・ソウル・シンガーの歌うジャンプ・ナンバーは、とてつもなくつまらない(!)ものが多いんだけど、この人はその鋭い喉のキレ味で何でも聴かせちゃう。捨て曲のない素晴らしいシンガーです。ウィリー・ハイタワーさんの「Walk A Mile In My Shoes」と並ぶディープ界最強のジャンプ、「Love Attack」もあるしね。

スペンサー・ウィギンスさんはメンフィスのゴールドワックス他に60年代後半から70年代にかけて録音。残したのはシングル盤のみでした。レーベル仲間のジェイムス・カーさんと並ぶディープ・ソウル・ファンの宝物。しかしちんけな弱小レーベル(失礼!)にグレイト・シンガーが2人もいたなんて奇跡的です。

ジャンプ・ナンバーももちろんいいんだけど、やっぱりバラッドで「I'd Rather Go Blind」を。エタ・ジェイムスさんもクラレンス・カーターさんも素晴らしい録音を残した、まさに名曲。サビもへったくれもない単純な4小説の繰り返し、しかも2コードなんだけどね、なんだかよくできた大好きな曲です。ビヨンセもエタになりきって(キレイ過ぎるけど)歌ってます。これもまたいい。

スペンサー・ウィギンスさんのバージョンは↓。1970年にマッスル・ショールズのフェイムに残したシングルのB面から。名曲を最高のバックでこの人が歌っちゃうんだから良くない訳がない。なんだけど、このシングルは正規には未アルバム化。僕の持ってる音源もかつて渋谷の某レコード店で買った海賊盤LPです(上記)。名演なのにね、ガンコ親父になっちまったフェイムのリック・ホールが権利離さないみたい。ジミー・ヒューズさんの作品が最近ようやくCD化されたんで、一連のフェイム作品も一気に出るか、と期待してたんだけど、その後止まっちまってます。残念。

スペンサー・ウィギンスさんは今も元気にゴスペル歌ってて、最近じゃCDも出してるんですが、チープなバックでは聴きたくなくて、今のところ未聴。



posted by ac at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | soul | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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