2008年04月29日

Nearer To You / Betty Harris

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ニュー・オーリンズのソウル・クィーンといえば何といっても以前にご紹介したアーマ・トーマス嬢ですが、ここにも隠れた女王様。知名度では一枚も二枚も劣るけど、肝心の喉の実力では決してひけをとらないのがベティ・ハリスさん。極上レディ・ソウルであります。

しかしよく調べてみたら生まれも育ちもニュー・オーリンズとは関係ないのね、この人。フロリダ生まれのアラバマ育ち。そのアラバマ育ちってのが「おぬし、根はディープだな」ってな感じなのですが、ニュー・ヨークでデビューしてたどり着いたのが60年代のニュー・オーリンズ。アラン・トゥーサンのプロデュースでサンスゥ・レーベルに録音多数。でも悲しいかなビッグ・ヒットには恵まれず、リアル・タイムではアルバム残せぬまま数年間でシーンから消えていったシングル・アーティストです。

思わず胸元に目が行っちゃう(失礼!)上記CDは、1998年にイギリスのウェストサイドで組まれたもの。1963年から69年までのシングル全てに未発表曲も収めた決定盤です。ジャケットはともかく、中身もとってもグラマーな濃厚盤。でも残念ながら廃盤です。今は中身をちょっと薄くしたオーストラリア編集盤が出てます。

ほぼ唯一のヒット曲がニュー・ヨークにおけるデビュー曲、バート・バーンズの手による「Cry To Me」。ご本家であるソロモン・バーク先生の名曲をぐっとテンポを落としたバラッド・ナンバーに仕上げてますが、ソロモン大王をくっちゃった(チャートはベティ嬢の方が上!)ってんですからやっぱり女王様です。ハスキーながら骨太な歌声はライバルのはずのアーマ・トーマスに何故かとっても似ていますが、そのキャラクターのかぶり方で随分損しちゃったかもしれません。

この「Nearer To You」は1967年録音の、ベティのディープ魂炸裂の一曲。アラン父さんらしくない重苦しいアレンジの三連バラッド。さらに輪をかけてニュー・オーリンズらしくないディープな歌声が乗っかり、重圧に押しつぶされちゃいそうな、でも何度も繰り返し聴きたくなっちゃうド迫力ナンバー。可愛らしい女声コーラスが唯一の清涼剤です。

ベティ・ハリスさんは30年以上の沈黙を破って昨年復帰作を出したらしい。でもこういうのって難しいんだよね、リングに戻ってきた元チャンピオンみたいに。ひょっとしたらスゴクいいかもしれないけど、がっかりもしたくなかったので未聴です。
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2008年04月20日

Gee / Charles Brown

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今日はこれから渋谷でライブです。前回のエントリーで書いた本『楽ソウル』の影響でこのところすっかりディープ・ソウルづいちゃっていたので、朝からジャンプ度アップせねば、とチャールズ・ブラウンさんのアルバムなど。CDで通して聴くのは久しぶりでしたが、しみじみいいアルバムです。

1996年の『HONEY DRIPPER』から。もはや40年代のジャンプ・ブルース黄金期を彩ったアーティストたちは殆どが死んじまった後、風雪を独り耐え忍んできた男ならではの、枯れた味わいの楽曲が並びます。もともとがバラッドやマイナー・ブルースが得意なピアニスト/シンガー。70歳を超えての録音でその声もますます深みを増しました。うーん、説得力あるなぁ。

渋〜い曲が並ぶ中、この曲「Gee」は彼にしては珍しくちょっとノベルティなジャンプ・ナンバーです。1940年代からのレパートリー、ってことは演奏し続け半世紀、ですか。その重さにはとても及びませんが、実は今日のライブで歌ってきます。恥ずかしながら。

ととと…、まったりしてる場合じゃなかった。気合を入れて、そろそろ行ってきます。
posted by ac at 15:04| Comment(2) | TrackBack(0) | jump & jive | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年04月18日

【番外編】 楽ソウル / 佐野勝明

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今日は番外編で一曲一献ならぬ一冊一献。いやいや、百献くらいいけそうな本が出ちゃったのでそのご紹介です。『楽ソウル』。書いたのはミニコミ誌『SOUND OFF』で知る人だけには知られていた佐野勝明さん。氏の30年近いディープ・ソウル歴を思い切り叩き込んだ大力作の自費出版(!)。全く頭が下がります。

内容は…というと、まぁ一応はレコード・レヴューなんだけど、これがただのレコード・レヴューじゃないんですよダンナさん。A4版の大型判型360ページに詰め込まれたのはシングル盤約1,200枚とCD/LPが約300枚、そのほとんどが60年代〜70年代初頭のディープ・ソウル。しかもCD/LPはシングル起こしのコンピレーション盤ばかり。オーティスやらアレサやらのビッグ・ネームはもちろんありません。シングル数枚残しただけで歴史の波間に消えていった、名も無きアーティストたちへの愛に満ちたオマージュであります。

僕自身一応自称ディープ・ソウル・ファン、しかもオタク心がないとは決して言いません。しかし幸か不幸かここまで一途な思いは持ち合わせておりませんでした。一時はシングル・コレクターの道へ足を踏み入れようかと悩んだこともあったけど、当時の経済状況から思いとどまり…、今じゃこんなとっ散らかった聴き方してる。しかしこの一冊を前にしちゃうと、こんなブログをちまちまと書いてることが情けないやら恥ずかしいやら。

生きているんだか死んじゃったんだか、あるいは今でもゴスペル歌ってるんだか、その消息すら知りようもないシンガー多数。彼らの残した音楽をこんなにも愛している者がこんな極東の島国にいようとは、そしてこうして活字になっちゃってるなんて、歌った本人たちにはおそらく知りようもありません。なによりもその存在を彼らに伝えたい一冊です。

ソウル・ミュージックはそもそも貧しき黒人たちのもの。LPなんか買えたのはごく一部の富裕階級のみでしょうから、ソウルの本質は確かにシングル盤にあるのでしょう。佐野氏曰く「ソウルはシングル盤聴かなきゃお話にならない」。ごもっとも。読めば読むほどシングル盤に手を出したくなっちゃう、大変危険な一冊でもあります。
posted by ac at 17:48| Comment(2) | TrackBack(0) | soul | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年04月10日

A Menina Dança / Os Novos Baianos

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冷たい雨降る一日、久しぶりに心熱くなるブラジルもので一献です。マリーザ・モンチさんが『A GREAT NOISE』(1997)でカヴァーしていた「A Menina Dança(娘はダンス)」。オリジナルはノーヴォス・バイアーノスの皆さん。1972年の2ndアルバム『ACABOU CHORARE』から。

「新しいバイーア人」ことノーヴォス・バイアーノス。その名のとおりブラジル北東部のバイーアにて、ギター/ヴォーカルのモライス・モレイラを中心に1968年に結成されたグループです。カエターノ・ヴェローゾやジルベルト・ジルのいわゆるトロピカリズモの次の世代ですね。国を追われた先達同様、彼らも当局に目をつけられ各地を転々と逃亡しつつも、ヒッピーのようなコミューンで共同生活をしていた、らしい。そこにはジョアン・ジルベルトさんも出入りしていたとか。サンバにボサノヴァにバイアォンにショーロ、そこにロックの要素を思い切りぶち込んだ混血文化音楽。雑多なんだけども、どの曲も屈託のないピュアな曲ばかり。何だかとても気持ちいいなぁ。

なかでも繰り返し聞きたくなっちゃうのがこの曲「A Menina Dança」。女性ヴォーカルのベイビー・コンスエロさんのまっすぐな声にやられてしまいました。少年が歌っているかのような中性的なセクシーさ。若き日のマイケルくん?ちょっと違うか…。

ガット・ギターの美しい響きで始まり、力強いエレキ・ギターのソロで終わる一曲。ベイビーの舌ったらずのスキャットがとってもかわいいです。
posted by ac at 21:52| Comment(0) | TrackBack(0) | brasil | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年04月05日

Clear Days And Stormy Nights / Don Bryant

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毎度のごとく年度末のドタバタであわわあわわと慌てふためいてるうちに、いつの間にやら新年度です。セ・リーグもとっくに開幕しちゃったし高校野球は終わっちまうし桜もはらはら散り始めてる。はぁとため息、じっと手を見る。ま、いつもの自分の手でありました。

そんなこんなでこのブログの更新もままならなかったわけですが、ようやく一息、今日はとっておきのこの人、ドン・ブライアントさんで一献。メンフィスはハイ・レコードの初期を力強い喉で引っ張った、素晴らしいサザン・ソウル・シンガーです。

ジャンプ・ナンバーでの切れのいいノリとバラッド・ナンバーにおける力強い声のノビ。実力のある優れた歌い手だと思うけど、何故だか当時は全然売れなかったみたい。10数枚のシングルとソウル名曲集のカヴァー・アルバム1枚残しただけで60年代のうちに表舞台から潔く去ってしまいました。その後はソング・ライターとして嫁さんのアン・ピーブルズさんをはじめ、ハイ所属のアーティストを裏からサポート。名ソング・ライターでもあります。「Keep On Loving Me」はほんとに名曲だと思います。

さて、シンガーとしてのドン・ブライアントさん。上手く歌おうとするとダメなのね、この人。なんだかちょっとなよっとしちゃう。でも感情のほとばしるまま直球一本、突き押し相撲で勝負するときの男気溢れる歌いっぷりはまさにソウルです。むき出しのソウル。やられちまいます。「自分、不器用ですから」と語っているようないなたい男の魅力。

この「Clear Days And Stormy Nights」はそんな直球バラッド。ヒラ歌から全開のフルトーンがたまりません。CD化にあたり発掘された未発表曲ですが、彼の残した数少ない録音の中では最上の出来かも。洗練される前の荒削りなハイ・サウンドもまたいいです。



posted by ac at 00:52| Comment(0) | TrackBack(0) | soul | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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